よくあるご質問:ジェンダー不平等指数(GII)とは

・ジェンダー不平等指数(GII)とはなにか?
ジェンダー不平等指数(GII)は、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、エンパワーメント、労働市場への参加の3つの側面における達成度の女性と男性の間の不平等を映し出す指標である。値は、0(女性と男性が完全に平等な場合)~1(すべての側面において、男女の一方が他方より不利な状況に置かれている場合)の間の数字で表される。リプロダクティブ・ヘルスの側面は、妊産婦死亡率および15~19歳の女性1000人当たりの出産数の2つの指数で、エンパワーメントの側面は、両性が立法府の議席に占める割合および、両性の中等・高等教育の達成度の2つの指数で、労働市場への参加の側面は、女性の就労率で測定する。GIIは、人間開発のこれらの側面がジェンダーの不平等によってどの程度そこなわれているかを浮き彫りにし、政策分析と権利擁護の主張のための土台をなすデータを提供する目的で考案された。

・GIIは、どのようにして算出するのか?国レベルと地域レベルでどのようなことが明らかになったのか?
ジェンダーの不平等が皆無な国はない。したがって、GIIを通してジェンダーの不平等を考慮に入れると、いずれの国もHDIのレベルがいくらか落ち込む。GIIの方法論は、不平等調整済み人間開発指数(IHDI)と同様である(詳しくは、本報告書の「テクニカルノート3」を参照)。いずれの指数も、当該の側面における欠陥によって、人間開発の潜在的可能性がどの程度そこなわれているかをパーセンテージで示す。ただし、GIIはHDIと異なる側面を対象にしているので、GIIによりジェンダー間の不平等が存在すると明らかになったとしても、単純にHDIが後退したとみなすことはできない。また、GIIはHDIと異なり、数値が高いほど達成度が低い。

GII値の世界平均値は、0.492である。つまり、3側面の達成度がジェンダーの不平等により49.2%そこなわれているとみなせる。地域ごとの平均値を見ると、不平等が最も軽度なのは31%の欧州・中央アジア、不平等が最も重度なのは、61%のサハラ以南アフリカである。国別では、不平等が最も軽度なのはスウェーデン(4.9%)で、最も重度なのはイエメン(76.9%)となっている。サハラ以南アフリカ、南アジア、アラブ諸国は、ジェンダーの不平等による後退がとりわけ大きい地域である(それぞれ61%、60.1%、56.3%)。地域ごとのパターンを見ると、世界を通してジェンダーの不平等を生み出す最大の原因がリプロダクティブ・ヘルスの側面にあることがわかる。この側面でサハラ以南アフリカの女性は73%、南アジアの女性は65.9%、アラブ諸国とラテンアメリカ・カリブ海諸国の女性はそれぞれ62.5%もの喪失に直面している。アラブ諸国と南アジアは、女性のエンパワーメントも比較的弱い。

・GIIの限界としては、どのような点を挙げることができるのか?
GIIにはデータの面で重大な制約があり、採用する指数の選択肢が狭められている。たとえば、エンパワーメントに関して、国政レベルの立法府の議席に占める割合を指数として用いているが、地方議会やその他のコミュニティレベルでの参加や公的な舞台への参加の度合いは考慮できていない。労働市場への参加の側面では、所得、雇用、無償労働に関する情報が欠けている。このほかの重要な側面も考慮に入れられていない。たとえば時間の使い方も、GIIに反映できていない重要な側面の1つである。女性はおうおうにして、子どもや高齢者、病人などのケアや家事労働の負担が男性より重く、そのために余暇時間が失われており、その結果として精神的ストレスが高まったり、肉体的な疲労が積み重なったりしやすいのである。資産の所有状況、ジェンダーに起因する暴力、コミュニティの意思決定への参加といった側面も反映されていない。これは主として、データの不足が原因である。

・GIIの算出で用いたデータの出典は、なにか?

GIIは、主要な公開データベースのデータに依拠している。妊産婦死亡率は国連児童基金(UNICEF)の『世界子供白書』、15~19歳の女性1000人当たりの出産数は国連経済社会局の「世界の人口推計」、教育の達成度は国連教育科学文化機関(UNESCO)統計局の教育達成度表および、Barro-Leeのデータ、立法府の議席割合は列国議会同盟のデータ、労働市場への参加は国際労働機関(ILO)のLABORSTAデータベースによる。

・リプロダクティブ・ヘルスの側面について、男性のデータ抜きに、女性のデータだけを用いることに、問題はないのか?
GIIで用いられているリプロダクティブ・ヘルス関連の指数は、女性のデータだけで、対応する男性のデータはない。したがってこの分野では、女性と男性を比べるのではなく、妊産婦の死亡がなく、思春期女性の妊娠がない状態といった「本来あるべき状態」との落差を測定することにより、不平等の度合いを割り出している。このような方法が正当化できるのは、妊産婦の安全がどのくらい確保されているかは、社会が女性の生殖面での役割をどのくらい大切に考えているかを反映しているとみなせるからである。15~19歳の女性1000人当たりの出産数が示すように、女性がきわめて若い段階で出産と育児をおこなうと、母子の双方にとってリスクが大きく、思春期に母親になった女性は学校に通えなくなり、専門技能を必要としない職に就かざるをえなくなるのである。

・どうして、GIIの指数の多くは、値がゼロの場合があるのか?

2011年版では、GII算出対象国の146か国中で、立法府の女性議員の割合が0%だった国は2か国だけである。これらのケースでは、相乗平均による計算を可能にする便宜上、0%に代えて0.1%を値として用いた。この処理が正当化できるのは、たとえ立法府に女性の議員が1人もいなくても、女性の政治に対する影響力が完全にゼロということはないからである。このような国のGII順位は、0%の代わりにいくらの値を用いるかによって、大きく左右される。もし、0.1%でなく、実際に記録された(ゼロ以外で)最も低い値を代入して用いるとすれば、2011年版の場合、その値は0.07%となる。

・2011年版で、GIIの計算方法が変更された点はあるのか?

2011年版では、新たに妊産婦死亡率の正規化をおこなうようにした。GIIの算出に当たって、妊産婦死亡率は10を最小値とし、それ未満は切り捨てられる。その結果、GIIの値の変動幅が影響を受けるが、その幅は理論上、0~1の間でなければならない。そこで、妊産婦死亡率の値に10を乗じることにより値を補正するようにした。この措置を導入することにより、GIIの値は概して下落した。比較の便宜を図って、GII値の時系列変化を計算してある。Gender Inequality Index Trends 1995-2011 (UNDP Intranet)を参照。

・以前の人間開発報告書で用いていた指標であるジェンダー開発指数(GDI)やジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)に代えて、GIIを取り入れたのは、どうしてなのか?

ジェンダー開発指数(GDI)とジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)は、1995年、生活のあらゆる側面でジェンダー間の格差をなくすことを目指す取組みの進捗状況を監視する重要性について国際的認識が高まるなかで導入された。この2つの指標は、ジェンダー問題の議論に大いに貢献したが、理論面と方法論面の両面で限界を抱えていた。GIIは、2010年の人間開発報告書20周年記念版において試験的に取り入れられた指標である。HDIが進化し続けるのと同じように、GIIも改善を加えられ続けるだろう。GDIは、ジェンダーの不平等を測る指標ではなかった。この指標は、HDIの基礎的構成要素におけるジェンダーの不平等の度合いに基づいて、HDIの値に調整を加えた指数だった。つまり、HDIと独立して分析することができなかったのである。HDIの3つの側面で見て取ることができる差異は概して小さく、その結果、HDIとGDIの値の違いはわずかなものにとどまり、ジェンダーの格差が些細なものであるという誤った印象を生み出していた。しかも、全体の4分の3以上の国について、ジェンダーごとの所得データが欠けているために、非現実的な想定に基づくきわめて粗雑な方法により、ジェンダー別の所得を推計しなくてはならなかった。

GDIとGEMでは、相対的な達成度を測る指数と絶対的な達成度を測る指数を併用していた。所得に関しては、ジェンダー別の所得シェアと所得レベルの両方を用いていた。しかし、所得レベルが指数の値を大きく左右するので、所得レベルが低い国は、たとえ所得分配をはじめとするさまざまな側面でジェンダーの平等が完全だったとしても、高い指数を獲得できなかった。また、GEMに関しては、構成指標のほぼすべてにエリート層寄りのバイアスがかかっており、先進国や途上国都市部に適した指標となっていた。

GIIは、指数を算出する方法論を2つの旧指標から改善し、加えて、新たな構成指標を採用した。3つの側面におけるジェンダーの不平等を測るために、女性のリプロダクティブ・ヘルス面での地位、エンパワーメントの状況、労働市場への参加状況を映し出すうえで適切な指標を慎重に選んだ。また、GIIでは、GDIとGEMの一部の要素も取り込んでいるが、この両指標で最も異論の大きかった要素である所得面の要素は除外している。構成指標のうちの1つで高い成績を上げることによって、ほかの指標での成績の悪さを補うことができなくなった点も、GIIの特徴の1つである。

・GIIは、近年発表されているほかのジェンダー関連の指標とどこが違うのか?

2011年11月1日に発表された世界経済フォーラムの「グローバル・ジェンダー格差指数(GGI)」と人間開発報告書のGIIの間には、多くの違いがある。第1に、指数算出に当たって着目する側面、使用する指数が異なる。第2に、GGIが国の開発レベルを考慮に入れずにジェンダーの格差を測定しようとするのに対し、GIIは、リプロダクティブ・ヘルス、エンパワーメント、労働市場への参加という3側面におけるジェンダーの不平等が原因で人間開発の潜在的達成度がどの程度そこなわれているのかを浮き彫りにする。エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(英国の経済誌「エコノミスト」の1事業部門の調査会社)の「女性の経済機会指数(WEOI)」も、GIIとは違いがある。WEOIは、女性の経済参加の度合いに影響を及ぼす要因として、労働市場および社会的機関への参加に関する法律と規制に光を当てる指標である。この指標は、労働政策・慣行、女性の経済的機会、資金・教育・訓練の機会、女性の法的・社会的地位、全般的なビジネス環境という5つの側面に着目し、5つの側面それぞれについて4つないし5つの指数を選んでいる。経済参加におけるジェンダーの不平等が生まれる根底にある原因を理解する助けになるという点で、WEOIは経済協力開発機構(OECD)の「社会制度・ジェンダー指数(SIGI)」と同じく、GIIを補完するものと言える。

・GIIは、政策に対してどのような意味をもつのか?

GIIは、146か国について、保健とエンパワーメントと労働市場への参加の3側面におけるジェンダーの不平等の状況を明らかにする指標である。女性と男性の間の格差がどのような結果を生み出すかを各国政府やその他の機関、人々が理解するうえで役に立つ。GIIは、ほかのグローバルな総合指数と同様、国家間比較を可能にするための制約を受けているが、比較的容易に修正を加えて、国レベル、国内の地方レベルに応用することが可能である。

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