包括的なバリューチェーンでインドの繊維産業の成長を支援

製織工場での技術指導の様子

日本を代表する総合化学メーカーの旭化成は、2016年3月にビジネス行動要請(Business Call to Action:BCtA)に参加して以来、インドにおける包括的なバリューチェーンを通じて繊維産業を支援してきました。2021年2月にはインクルーシブ・ビジネスにおけるコミットメントを更新し、技術指導などを通じて、2023年までに「ベンベルグ®」のサプライチェーンに関わる労働者1,671名の技能向上を図ると同時に、中小の製造業者55社の生産効率を高める計画です。また、インドの高等教育機関3校に通う、将来のインド繊維産業を担う学生575名に対して、実践的な技術研修の機会の提供などを通じた能力開発にも貢献します。さらに、2023年までに、一日40,000㎡の染色排水を浄化・リサイクルし、現地の約25,000の低所得世帯の使用水量の確保を目指します。

インド繊維産業が抱える課題

インドの繊維産業では多くの労働者が工場に勤めていますが、その多くは、技能の向上や昇給する機会が限られているのが現状です。グジュラート州(インドで最もテキスタイル産業が発展している地方の一つ)では、中小規模の繊維事業者が多く、生地生産種は限定され、品質も十分に安定していません。また、インドの他産業でも見られる様に、女性の社会進出の遅れ、低い社会的地位も、大きな社会課題です。さらに環境面においても、特に糸や生地の染色時に発生する大量の水消費と汚染された排水が、周囲で暮らす人々の生活を脅かしています。

事業を通じた包括的な支援

旭化成はインクルーシブ・ビジネスモデルの一つとして、ベンベルグ®(綿実の周りの産毛であるコットンリンターを原料とする再生セルロース繊維の商標)事業を実践しています。「ベンベルグ®」は、女性の民族衣装用に初めてインドに輸出されてから、2021年で45周年を迎えました。

「ベンベルグ®」を使用したインドの民族衣装(「Hemang Agrawal」が作成)

「マイクローザ®」を適用したプラント(後ろの設備が「マイクローザ®」)

旭化成はインドにおいて、「ベンベルグ®」の原料調達から最終製品までの企業活動(バリューチェーン)に直接・間接に関与し、技術の向上、安定した収入の確保や新たな仕事の創出など技術開発や人材育成に取り組んでいます。原料であるコットンリンターの多くをインドから購入すると共に、現地の原料メーカーに対するコットンリンター採取設備の無償貸与や、旭化成の技術者による生産性向上のための指導や技術サポートを提供しています。日本へ輸出されたコットンリンターは、「ベンベルグ®」原糸に加工された後インドに輸出され、機屋へ販売されています。生地生産段階での製織や染色などの技術指導も継続して行っています。加えて、将来インドの繊維業界、ファッション業界を担う若者・学生への教育にも力を入れており、能力の向上を目的に数校の大学に教育サポートを行い人財育成にも貢献しています。

上記の活動に加え新たな取り組みとして、生地染色時に発生する排水処理に、旭化成が開発したろ過性能のある中空糸膜「マイクローザ®」の適用を顧客へ提案するなど、染色工場のゼロ排水実現を進めています。これにより、工場周辺の環境保全と、水の再利用による貴重な天然水資源の節約への貢献が期待されます。

国立ファッション工科大学(NIFT)大学での授業風景