開催報告: TICAD7に向けて#13

アフリカ開発会議 (Tokyo International Conference on African Development: TICAD)は25周年の節目を迎え、2019年8月28日~30日には横浜で第7回目の首脳会議が行われます。これに先駆け、UNDP駐日代表事務所ではアフリカ開発について語る対話シリーズとして、2018年6月末に「AFRI CONVERSE」を立ち上げました。

7月26日(金)に開催した「AFRI CONVERSE」の13回目(最終回)では、南アフリカ・ステレンボッシュ大学のスカーレット・コルネライセン教授、英国・リーズ大学のアンピア・クウェク教授、モデレーターを務めた立命館大学国際関係学部の白戸圭一教授を迎え、「日本のアフリカ政策の展望とアジア・アフリカ協力」をテーマに開催しました。

はじめに、TICAD7のテーマである「アフリカに促進を!ひと、技術、イノベーションで。(Advancing Africa’s Development through People, Technology and Innovation)」について、登壇者がそれぞれの視点からコメントしました。

まず、リーズ大学のアンピア・クウェイ教授は、日本人の若者におけるアフリカ開発会議(TICAD)の知名度の低さについて言及しました。日本は他の国・地域に先駆けてTICADを開催し、日本とアフリカ諸国との関係構築や発展に貢献してきたこともあり、今、英国の大学で学ぶ日本人学生の多くはアフリカ諸国についてとても関心を持っているにも関わらず、TICADについて知らないことが課題と述べました。一方で、中国人の大学生の間では、中国とアフリカ協力フォーラム(Forum on China - Africa Cooperation: FOCAC)の認知が高く、ガーナ人の学生でもFOCACは知っているがTICADは知らないと回答を得たことを共有しました。クウェイ教授は、日本政府は自国民にはもちろん、国際社会に対してもTICADは何か、これまでどのような成果をあげてきたのか上手く伝えられていないことが問題であり、今後の課題と説明されました。

続いて、ステレンボッシュ大学のスカーレット・コルネライセン教授は、TICADを通じた日本とアフリカ諸国の友好関係構築の過程について説明しました。TICADが関係構築の軸となってきたことに触れ、特に初めてアフリカで開催されたTICAD6が交流の活発化に大きく影響したと評価しました。また、現在、南アフリカを含むアフリカ諸国では、中国による協力のあり方に疑問の声が多数あるなかで、日本政府率いるTICADは、アフリカがもつダイナミズムや、成長を続けるアフリカ諸国の考えに常に耳を傾けながら共に成長していく姿勢があると強調しました。

次に、日本によるアフリカ諸国への支援の特徴と、そのアフリカ諸国と国際社会からの評価について登壇者が見解を述べました。

まず、クウェイ教授はこれまでの日本の支援や協力を高く評価し、歴史的に日本がアフリカ諸国の発展に向けて協力してきたことを具体的に振り返りました。

1960年代に日本はどこのアジア諸国にも先駆けてアフリカで事業を展開し、特に日本が誇る自動車産業においては、早い段階で南アフリカを中心に進出し、ビジネスを展開するなどアフリカの基礎を共に築いてきたと述べました。このような功績は高く評価されているが、近年では中国の事業展開の勢いが顕著で存在感が増していると説明しました。

また、クウェイ教授は若者による文化理解・交流が重要であり、日本に対する諸外国からの理解を深める他、国際相違理解の増進が必要と述べました。

続いて、コルネライセン教授はアフリカの発展に向けた日本と中国のアプローチ方法は違うことを指摘した。また、中国によるアフリカ諸国への進出を高く評価する一方、事業や政府間の協力に関して課題も説明しました。

中国によるアフリカ進出は凄まじく、アフリカの経済成長に間違いなく貢献しているが、事業の質についてはアフリカ諸国から疑問の声も多く、特に中国政府による投資や関与により腐敗の危機があることが現地の新聞などでも報じられている現状を共有しました。

これらの現状を受けて、日本のアフリカ諸国に対するアプローチの仕方が一定の評価を受けているとも考えられるのは事実だが、実際は中国や韓国企業による消費者向けの製品(冷蔵庫や服など)がアフリカ諸国で広く買われ、使われており、ブランドを着実にアフリカに根付かせ、浸透させることに成功していると述べました。

最後に、モデレーターを務めた立命館大学の白戸教授は、2019年6月に発表された国際貿易開発会議(United Nations Conference on Trade and Development: UNCTAD)のWorld Investment Report について触れ、日本は世界のGDP国別ランキングに3位に位置しているにもかかわらず、アフリカに投資している国ランキングトップ10にも入っていないことを指摘。この現状を受けて、今後日本はどうするべきか登壇者に問いかけました。

クウェイ教授は、確かにアフリカに対して日本より莫大な金額を投資している国は多くあるが、その全ての投資がアフリカ諸国にとって良いように使われているとは限らないと、このようなデータで示されない事実もあることを強調しました。このような投資よりも、国際協力機構(JICA)がこれまで実施してきたプロジェクトの方がよっぽどアフリカのためになっていると強く主張しました。

コルネライセン教授は「投資額が高ければ良いということではない。何がアフリカ諸国のためになっているのかが重要。日本はKAIZEN(改善)とは何かを教えてくれた。これは今後、技術移転やイノベーションしていく上でとても重要なスキルだと思う」と述べました。

参加者からは、「多くの日本企業はアフリカでのビジネスに関心を見せている一方、衛生面や安全面が確保されていないことを受けて、一歩進出までに踏み出せない企業が多くある。そういった企業・従業員の意識をどう変えるべきか」「日本企業でアフリカに進出している企業のほとんどは大企業であり、今後は日本の中小企業による進出が鍵だと思うが、アフリカ諸国の政府はそれぞれどうビジネス環境を整える必要があると思うか」など数多くの質問があげられました。

UNDP駐日代表事務所はTICAD7に向けてアフリカ開発を多様な視点で考える対話型イベント・シリーズ「AFRI CONVERSE」を立ち上げ、毎月様々なテーマで実施をしてきました。今回のAFRI CONVERSE 13「日本のアフリカ政策の展望とアジア・アフリカ協力」(2019年7月末開催)をもって最終回を迎えました。多くの方々にご参加、ご協力いただきアフリカ開発をより発展させるべく有意義な対話が行われたことを祈り、ここに感謝申し上げます。