アフリカ開発会議 (Tokyo International Conference on African Development: TICAD)は25周年の節目を迎え、2019年8月28日~30日には横浜で第7回目の首脳会議が行われます。これに先駆け、UNDP駐日代表事務所ではアフリカ開発について語る対話シリーズとして、2018年6月末に「AFRI CONVERSE」を立ち上げました。

2019年2月22日(金)に開催した「AFRI CONVERSE」の第8回目では、国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所のチャールズ・ボリコ所長、みずほ情報総研株式会社 コンサルティング事業推進部の帆秋寛子氏、日本植物燃料株式会社の合田真CEO、明和工業株式会社 海外事業部の徳成武勇部長、独立行政法人国際協力機構(JICA)アフリカ部の菊地明里紗氏を迎え、アフリカにおける農業と食料安全保障の現状と展望について、政府、大学、国際機関、民間企業、NGOから集まった約150名の日本、アフリカ諸国からの参加者と協議しました。

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FAO駐日連絡事務所のチャールズ・ボリコ所長は、世界の食料安全保障と栄養の現状について話しました。世界では全ての人口が十分に食べられる量の食料が生産されているにも関わらず、気候変動、自然災害、紛争、経済低迷によって約8億2100万人の人々が飢餓に苦しんでいます。ボリコ所長は食料不安がもたらす社会不安と飢餓の関係についても触れ、2030年までの国際的な開発枠組みである「持続可能な開発目標(SDGs)」のゴール2では、2030年までに飢餓人口をゼロにするという目標が掲げられていることを強調しました。また、食料安全保障は国家やコミュニティーレベルではなく、個人あるいは世帯レベルで確保される必要があると述べました。その中で、アフリカにおける人口増加は農業セクターにとって機会であると同時に課題でもあるとし、アフリカでは依然4人に1人が飢餓に苦しんでおり、飢餓人口は近年増加に転じていることに警笛を鳴らしました。                                           

ルワンダで「グローバル・アグリイノベーション」事業を行うみずほ情報総研の帆秋寛子氏は、ルワンダで行うリンドウ栽培プロジェクトを紹介し、アグリビジネスはアフリカと日本の双方にとっての持続可能な開発をリードしていくビジネスだと述べました。ルワンダにおけるプロジェクトはみずほ情報総研を中心にトヨタ自動車、岩手大学、岩手県八幡平市、そしてルワンダ政府と協力を経てビジネス化したもので、現在ではボツワナでもスマート農業のシステムを導入しています。今後も日本の中小企業の技術を活かし、持続可能な社会とアフリカ開発へ貢献をしていきたいと述べました。

また、モザンビークの地方で情報プラットフォームを構築し、金融包摂の試みを行う日本植物燃料の合田真氏は、未電化地域における電子マネーカードを活用した売上や支出等の情報管理やシステム導入の際の文化的理解への工夫について述べました。また、このカードの導入によって小規模ビジネスへの融資が可能になり、借金返済に結びついた事例などを共有しました。さらに、今後予定されている農産品のバーチャル市場の構築などデジタル技術を活用した農業流通システムのプラットフォームの構想を発表しました。

有機ごみを農業用やエネルギー用の炭にする「バイオマス炭化装置」の設計・製造を行う石川県・金沢市にある明和工業の徳成武勇氏は、気候変動による降雨パターンの変化で水不足の問題が深刻化しているアフリカの半乾燥地域において、天水農業の干ばつ耐性向上のためにバイオ炭が有効である可能性を、実際にケニアで行った実証実験データを元に説明しました。炭化技術の導入によってバイオ炭の現地生産や活用を可能にし、各地域の農業生産性を改善することで、現地主体の持続可能な成長に貢献していきたいと述べました。

また、明和工業は2016年の第6回アフリカ開発会議(ケニア・ナイロビにて開催)にて技術を展示したことにより多くのアフリカの政府、企業、大学に注目されたことをきっかけにアフリカへの足掛かりを築いてきたと話しました。明和工業では、ABEイニシアティブのアフリカ人留学生を通算50名もインターンとして受け入れてきました。

JICAにて小規模農家支援プロジェクトを担当する菊地明里紗氏は、Smallholder Horticulture Empowerment & Promotion(SHEP)アプローチを紹介しました。SHEPアプローチは、農家と市場関係者の情報格差を軽減し、内発的動機付けによりモチベーションを向上させた結果、農家の「作って売る」から「売るために作る」への意識変革を起こしたと話しました。意識変革と併せ、マーケティングスキルや栽培スキル向上により農家の園芸所得向上を目指すこのアプローチにより、ケニアでは、わずか2年間で2,500もの小規模農家の収入が倍増したとの実績も示しました。また、三井物産・ETG社などの企業との連携を強化して、SHEPアプローチの普及拡大を目指していると述べました。

 

AFRI CONVERSE #8の登壇者

 

後半はモデレーターを務めたUNDPアフリカ局TICADプログラムアドバイザー・小松原茂樹による「ビジネス機会と課題、そしてビジネスを成功させる鍵は?」と問いかけに対し、登壇者が知見を共有しました。

明和工業の徳成武勇氏は、気候変動分野の課題解決において現地側からは日本企業の技術への期待感はあるが、日本企業の進出は進んでいないことを課題として挙げ、この需要への対応は大きなビジネス機会であるとし、JICAの実証実験や調査の機会などを活用して技術の適合性を現地で試すことは大きなステップになりうると話しました。特に、当社のような地方の中小企業が全てのリソースを自社で保有することは難しいが、それを乗り越えるためには社会課題解決に向けたビジョンを共有し、同じ目標に向かって他者と協力していくことが鍵であると述べました。

JICAの菊地明里紗氏は、最も機会があると感じているのは急増する若年層人口であり、それに伴い市場も拡大が見込まれるが、現状では農産品の需給バランスがとれず、安定した食糧確保ができないというボトルネックがあることを説明しました。そのうえで、これを解決するにはイノベーティブな技術は勿論重要だが、技術を活用するための農家のキャパシティ向上が必要であり、例えばSHEPアプローチのような小規模農家への教育が肝要であると述べました。

みずほ情報総研の帆秋寛子氏は、気候変動による影響は大きいが、労働人口の増加は機会となり得ると話しました。しかし、アフリカ大陸は大きくかつ54カ国にわたるため、テクノロジーの欠如はあらゆる障壁となっており、さらに効率の悪さも課題となっているため、これらの点においてのイノベーションが求められているだろうとの見解を示しました。

日本植物燃料の合田真氏は、アントレプレナーシップ(起業家精神)があれば、機会は無限大だと感じていると述べました。例えば、自身の活動エリアであるモザンビークの田舎は4%の電化率という現状があるが、これは人によってはボトルネックと感じるが、起業家によってはそれが機会に見えることがある、と説明しました。一方で、アフリカの銀行は比較的金利が高いことは企業にとっては障壁となっているということを実体験を元に現状を伝えました。

最後に、FAO駐日連絡事務所のボリコ所長は、17のSDGs目標のどの1つをとっても1カ国や1社、1団体のみでは達成できないため、パートナーシップを通じて一緒に取り組んでいくことが鍵であると強調しました。さらに、国連機関は人権・人道機関である一方、民間企業と協力して社会へ真の変化をもたらし、SDGs達成に向けて大きなインパクトを与えることを目指していると説明しました。日本は、人材、教育、技術といった点で世界でもとりわけ優れている国であり、それらをアフリカに持ち込むのは政府ではなく企業であろうと述べました。また、アフリカでビジネス機会を得るにはリスクを想定して対応する必要があるが、国連の持つ知識と経験を活かすことで民間企業が恩恵を受けられることもあるだろうとし、今後の民間企業とのパートナーシップに期待を寄せて会を締めくくりました。

 

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