開催報告: TICAD7に向けて#2 (2019年横浜開催)

AFRI CONVERSE特別編に登壇したイブラヒム・マヤキ氏

今年でアフリカ開発会議 (Tokyo International Conference on African Development、略称TICAD)は25周年の節目を迎え、2019年8月28日~30日には横浜で第7回目の首脳会議が行われます。これに先駆け、UNDP駐日代表事務所ではアフリカ開発について語る対話シリーズとして、6月末に「AFRI CONVERSE」を立ち上げました。

2018年7月27日(金)に開催した「AFRI CONVERSE」の第2回目では、ピエール・ゼンゲ氏(アフリカ外交団TICAD委員会議長・駐日カメルーン大使)を迎え、アフリカ大陸において必要とされている工業化と雇用創出を支えるための日本企業の事業・投資促進について、活発な議論が交わされました。

ゼンゲ氏は、「日本政府のアフリカ開発支援の背景にTICADがありました。アフリカ全土が成長を続けてきた現在では、これまで以上にパートナーシップの必要性が増しています。アフリカは、日本のビジネスにとって非常に大きな市場機会を提供してくれます」と熱を込めてお話しされました。

続いて、アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)生として、日本の修士課程で学ぶ2名の学生が、ゼンゲ氏の発言を強調しました。彼らは、アフリカに対する認識は時に誤解を含んいるので正していく必要があると話し、自分たちが日本とアフリカの懸け橋となり、ビジネスや人の交流を促進していきたいと語りました。

「日本のサービスや製品は「品質と誠実さ」としてのブランドが確立されており、これは他国の競合相手にも決して引けを取りません」とABEイニシアティブの一人であるアリ氏から発言がありました。

アフリカ外交団TICAD委員会議長・駐日カメルーン大使のピエール・ゼンゲ氏

議論の様子

こうした議論を引き継ぎ、翌週8月2日(木)には「AFRI CONVERSE」特別編をJICAと共催しました。イブラヒム・マヤキ氏(NEPAD (アフリカ開発のための新パートナーシップ計画調整庁)長官)* を特別ゲストとして迎え、アフリカの経済構造転換を支援するための「カイゼン」とイノベーションを中心に議論が行われました。

アフリカにおけるイノベーションに関するNEPADの最新の研究に触れ、マヤキ氏は特定の国における事業規模と分野毎のイノベーションの現状について見解を述べました。全ての事業規模と分野においてアフリカ全土の中でも高いレベルのイノベーションを達成しているとして、イノベーション先進国としてウガンダが挙げられました。こうしたイノベーションを促進するにあたり、資源の分配や、法的な環境整備といった政治的コミットメントの重要性が挙げられました。日本のビジネスモデルである「カイゼン」も、イノベーションを加速しうる1つの大きな柱であると述べました。

続いて、加藤隆一氏(JICAアフリカ部長)より、「「カイゼン」とイノベーションは、アフリカの将来における第4次産業革命の重要なカギとなるでしょう。だからこそ今、アフリカ開発の最も著名な有識者の一人であるマヤキ氏と共に、アフリカの工業化について議論することはまたとない好機だと思います」との発言がありました。

マヤキ氏は、革新的ソリューションを適用するのに必要な事業環境の有無が市場展望や日本企業が事業拡大のために必要である現地パートナーの能力を左右しうるとし、そのため日本企業は各国のイノベーション・エコシステムの現状に基づいてビジネス戦略を確立していく必要があると述べました。さらに、アフリカの人々が抱える課題に対する革新的なビジネス・ソリューションを提供している日本の若手起業家について、議論しました。

「私は、日本の若手起業家たちの熱意や決意に感銘を受けました。彼らは机上の推論ではなく、草の根レベルでの現地訪問から得られた感覚を大切にし、それらに基づいてビジネスの関する決断をとても素早く下しています。」とマヤキ氏は話しました。

この日はさらに、アフリカでの事業リスク低減や市場アクセスを拡大しうる日本とヨーロッパ・アジアの企業間の戦略的パートナーシップが重要であることについても議論が及びました。その際、日本とヨーロッパ・アジア企業の間にある潜在的な事業エコシステムの差異がもたらす課題を念頭に置くことが重要であるという点も強調されました。

工業化とイノベーションに関するこうした一連の対話は、TICAD7に向けた議論の一助になります。本イベントに参加された方々は、日本・アフリカ双方の企業にとって、TICAD7がアフリカにおける事業や革新的ソリューションを披露する重要な場であると認識頂きました。日本の企業関係者は、本イベントに参加したことで、自社の成功事例をより多くの関係者に披露するために積極的にTICADプロセスに関与していこうと考えるようになったと好評をいただきました。

会場の様子

参加者からは多くの質問がとびました

 
* NEPAD: the New Partnership for Africa’s Development(アフリカ開発のための新パートナーシップ計画調整庁)。2001年のアフリカ連合サミットで採択され、アフリカ連合の組織とプロセスに統合される形で2010年に設立された、アフリカによるアフリカ開発のためのイニシアティブ。アフリカ連合における実施機関として、アドボカシー活動、NEPADによるプログラムやプロジェクトの促進や調整、国際社会、地域経済社会及び加盟国間の資金の調達や分配を行う。
 

AFRI CONVERSEは、毎月末の金曜日(プレミアムフライデー) の18:00~19:30に国連大学ビルにて開催していく予定です。

今後のスケジュールとゲスト・スピーカー(予定)は以下をご参照ください。

2018年8月31日(金) AFRI CONVERSE #03

  • 武内進一 | 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター長・教授
  • 高橋基樹 | 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科教授

2018年9月28日(金) AFRI CONVERSE #04

  • 市民社会ネットワーク for TICAD

お問い合わせ:

近藤千華  |  TICAD連携専門官 / 国連開発計画 (UNDP) 駐日代表事務所