インドネシアのパーム油と森林伐採に関するUNDPの取り組みについて

2015/06/22


パーム油の問題
インドネシアは近年世界一の森林伐採大国となり、その原因は木材、紙パルプ、パーム油農園と言われています。米国の独立シンクタンクが発表した最新リサーチによれば、森林伐採と泥炭地開発は世界中の気候変動の原因に1割も貢献しており、人々の生活や生物多様性を脅かす喫緊の課題です。

何故、重要な森林がパーム油に脅かされるのでしょうか。実は、世界最大のパーム油生産国家インドネシアは、国の成長と開発をこの農作物に頼っています。年間売上は200億米ドルに上り、何百万というインドネシア国民の雇用を生み出し、インドネシア政府は2020年にパーム油生産を現在の約3000万トンから4000万トンへの増加を目指しています。パーム油は他の食用油の10倍近い生産性を誇り、食料品や化粧品に多く使用され、またバイオ燃料への転用も進んでいる実に有用な油なのです。

しかし、パーム油農園の拡大を受けて、森林破壊や企業と地元住民の土地紛争を巻き起こすなど、環境的にも社会的にも対策が急務となっています。私自身も数年前にインドネシアの西カリマンタンの奥地でパーム油会社に土地を追われた人々から話を聞く機会があり、この問題の根深さを痛感しています。

問題をさらに複雑にしているのが、インドネシアのパーム油耕作地の40%以上を耕作する小規模農家の存在です。小規模農家は25ヘクタール以下の農園を管理し、インドネシア国内に200~250万人程度と推定されています。彼らの多くは正式に組織化されておらず、銀行の融資や公共サービスを受けられないでいます。その結果、小規模農家の収穫率は極度に低いままで、大企業付属の農園と比較すると3分の1にしか届きません。また、パーム油サプライチェーンは小規模農民、中間商人、委託会社が複雑に絡み合っているため、精製されたパーム油を見ても誰がどこで作ったものかは非常に判断しにくいのです。結果、小規模農家の多くが国有林に入り込んでパーム油農園を開いているという現状があります。

持続可能なパーム油産業確立に向けた取り組み
インドネシア政府はパーム油に対する国際世論の高まりを受けて、2011年に「持続可能なパーム油のインドネシア国内規定(Indonesian Sustainable Palm Oil、以下ISPO)」と呼ばれる義務型認証制度を導入しました。ISPOはインドネシアの全パーム油生産者に義務づけられている認証制度であり、2015年には私がアジアマネージャーを務めるUNDP・グリーン・コモディティ・プログラムで世界初の小規模農民のISPO試験認証も始まっています。ISPOはパーム油生産に関する既存の法律をまとめた制度のため、新規性が無いと言われることもあるが、私はインドネシアのように法律が(高い可能性で)守られていない場所ではかなりのインパクトがあると期待しています。

さらに、近年多くの大企業が、森林破壊や搾取的行為が疑われるパーム油の生産、取引、調達をやめる方針を発表しています。パーム油業者の最大手、ウィルマー、ゴールデン・アグリ・リソース、アジアンアグリ、カーギルの4社は昨年「ゼロ森林破壊」方針を発表しました。これら企業は、持続可能なパーム油生産のために必要であるとして、政府の強いリーダーシップを呼びかけています。

国連開発計画(UNDP)の取り組み
小規模農家の生産性や合法性が低く、サプライチェーンが複雑怪奇という現状は、政府と企業の協働が不可欠なことを示しています。そこで私は数年間の準備を経て、昨年ついにUNDPとインドネシア政府農業省の協同事業である、インドネシア・パーム油プラットフォーム(Indonesia Palm Oil Platform、以下InPOP)を設立しました。

InPOPはパーム油業界の関係者を一同に集め・議論する場を提供し、さらに小規模農家の生産性向上、ISPOの浸透、森林の本来の価値の浸透を目指しています。そのために、政府の小規模農家訓練機関の強化、農協の支援、企業と共同での技術導入や財政管理指導等、多岐の活動を行っています。しかし、対象となる小規模農民は何百万という数に上るため、その支援には莫大な費用と時間が必要です。そこで、InPOPのメンバーにも呼びかけ、皆の資源とノウハウを持ち寄り、一社のみならずサプライチェーン全体に利益を生み出す革新的な協力モデルを目指しています。

持続可能なパーム油の確立には、たとえ目的は異なっていても、すべての利害関係者が共通のビジョンに向かって努力すると同意することが大前提です。パーム油の持続可能性に向けたパートナーシップが今まさに構築されようとしています。

*グリーン・コモディティ・プログラムはUNDPにより2009年に設立された。農村開発、気候変動緩和、生態系サービスと強靭性強化を中心に、農業部門の経済効果、社会的・環境的配慮を改善することを目的とします。


宇野智之
UNDP・グリーン・コモディティ・プログラムアジアマネジャー
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イギリス生まれ。早稲田大学理工学部機 械工学科卒業。いすゞ中央研究所に入 社。その後、東京大学新領域創成科学研 究科 国際協力学修士課程修了。また、オ ッ ク ス フ ォ ー ド 大 学 (MSc in Nature, Society and Environmental Policy)修士 課程修了。野村総合研究所の研究員を経 て、2007 年 JPO 試験に合格。2008 年 6 月 より国連開発計画(UNDP)インドネシア 事務所勤務。2014年3月より現職。

 

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