第12回NY発 UNDPの援助最前線レポート: セルビアの大洪水後の復旧、防災支援

2016/01/25

洪水被害が大きかった西部コスイェリッチ市では、2015年10月UNDPからの支援を受けてが地域防災トレーニングを実施。市の消防署等の防災関係者や現地赤十字ら約20人が受講し、市民災害救助の知識や緊急介助の技術を身につけた。Photo: UNDPセルビア


国連開発計画(UNDP)ニューヨーク本部対外関係・アドボカシー局ジャパンユニットの二瓶直樹です。2015年11月31日から1週間、欧州バルカン半島の中央に位置するセルビア共和国*(以下、セルビア)に出張し、日本とUNDPが同年3月から実施する洪水後復旧支援プロジェクトを視察してきました。

日本ではあまり知られていないかもしれませんが、バルカン半島では2014年5月12日から16日にかけて1世紀ぶりの歴史的な集中豪雨に見舞われ、河川が氾濫し、各地で大洪水が発生しました。加えて地滑りも起き、多くの市民が避難を余儀なくされ、セルビア政府が非常事態宣言を出しました。

UNDPは、大洪水後にセルビア政府の要請を受け、洪水後の災害後ニーズ調査(Post Disaster Needs Assessment: PDNA)を世界銀行と欧州連合と共同で実施し、その結果、セルビア総人口の約2割にあたる160万人が被災し、総被害額は15億ユーロとしました。2014年11月にベルギーのブリュッセルで支援国会合が開催され、セルビア政府は「より良い復興(Build Back Better)」を実現するために国際社会の支援を求めました。

日本政府とUNDPは、2015年3月、日本・UNDPパートナーシップ基金経由で、セルビアの「緊急事態に対応するための強靭性構築プロジェクト」に364万ドルの拠出を決めました。プロジェクトでは(1)洪水により被害を受けたセルビアの24の自治体でインフラ整備(2)欧州連合(EU)の基準に沿った自治体の災害対策体制構築(3)災害リスク削減のために女性NGOへの支援(4)地滑りインフラの復旧、を目的にしています。

私はUNDPセルビア事務所の職員と、プロジェクト現場を訪れてその進捗を確認し、自治体職員や住民らから聞き取り調査をしました。最も被害が大きかったオセシィナ市などでは、洪水により流された市内の給水管工事、氾濫した河川の堤防建設などが順調に進んでいました。また、ベオグラードから南西に位置し、大きな河川に近く、洪水リスクが高かったヤゴディナ市やスビライナッツ市では、地滑りが起きた土地の修復や給水施設の修復が進んでいました。全てのプロジェクト現場では、日本のODAロゴ入りの看板が設置されており「日本の顔の見える」形で援助が実施されていることも確認しました。

スビライナッツ市では、市長から「日本はセルビアの友人」と力強く言われたことが心に残っています。これは、日本の経済協力や文化交流を通じてセルビアが親日国家であること、同市にパナソニックの部品組立工場があることが影響しているようです。実際、東日本大震災の際に、セルビアは世界でもいち早く支援のための行動を起こし、震災から7か月後の統計で、セルビアからの義援金(セルビア赤十字経由)は、2億円に近い数字になっていたそうです。セルビアは1997年から日本の経済協力を受け、日本の無償資金協力で提供された都市交通バスの側面には、日本の国旗と「From the People of Japan」の言葉が描かれ、今でも首都ベオグラードを走り、市民の重要な足となっています。

もう一つプロジェクトの成果と感じたのは、女性NGO向けの支援です。本プロジェクトでは、日本政府が推進する女性のエンパワーメントに沿った活動が行われており、災害時における女性の地域社会での役割を強化、緊急対応能力を強化するため、女性の活動を支援する地元NGO10団体を選定し、各地で活動を支援しています。開発途上国においては、災害時において地域社会、世帯の一員である女性の役割が社会できちんと認識されていないことが多く、また十分な訓練を受ける機会が不足することが多々あります。セルビアでも同様です。プロジェクトから支援を受けるNGOの女性メンバーの方と面談した際に「プロジェクト支援を受けたおかげで、女性が防災活動の重要な担い手であることを認識し、将来の災害対策への備えが出来た」と力強く語ってもらいました。

今回の視察では、セルビアの大洪水を契機に、日本とUNDPが連携して、同国の復旧、防災に大きな貢献ができていることを現場でよく確認できました。これは、2015年3月の第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組2015-2030」と「仙台宣言」の理念に基づき、「より良い復興(Build Back Better)」、即ち、災害以前の状態に復旧するだけではなく、被災地をより良い状態に再建する実例ともいえます。UNDPと日本は、ボスニア・ヘルツェゴビナでも同様に、洪水後の復旧支援を実施しています。今後も世界の各地でUNDPと日本の連携が期待されています。

セルビア共和国

南東ヨーロッパ、バルカン半島西部の国にある内陸国。首都はベオグラード。人口約710万人。2012年3月に、EU加盟候補国となり、加盟交渉を継続中。国内にコソボの独立問題を抱えており(2008年にコソボが独立を宣言)、特にコソボ北部ではセルビア系住民とアルバニア系住民の紛争の火種を抱えている。セルビアは、高中所得国であるが、経済状況は悪く、高い失業率を抱えている。日本は1997年から経済協力を開始し、現在は民間セクター開発、環境保全、保健分野を中心に支援を展開。スポーツでは、世界的有名なテニス選手ノバク・ジョコビッチや名古屋グランパスエイトに所属したサッカー選手ドラガン・ストイコビッチが日本でもよく知られている。

二瓶直樹
UNDP対外関係・アドボカシー局ジャパンユニット・JICA/日本連携アドバイザ
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2003年、国際協力機構(JICA)入構。以降、政府開発援助(ODA)業務に従事。2009-2012年、中央アジアのウズベキスタンにて、市場経済移行期の社会・経済開発を目的とした民間セクター及び法整備支援、運輸・電力インフラ支援に従事。2012年8月よりUNDPニューヨーク本部にて勤務。早稲田大学大学院社会科学研究科修士卒。

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