平和構築のためのテロ対策能力強化―アフリカ8カ国で実施

日本政府の補正予算によって支援され実施された、平和維持の現場におけるテロ予防に関する訓練コース

2019年6月11日

ガーナのアクラで開催した訓練プログラム開講式にはKAIPTC、UNDP、そして日本大使館関係者が参加しました。

マリや周辺国などでテロ集団による平和維持部隊に対する攻撃が増える中、国連開発計画(UNDP)ガーナ事務所は、同国アクラのコフィ・アナン国際平和維持訓練センター(KAIPTC)と合同で「アフリカの平和維持の現場におけるテロ対策能力向上」プロジェクトを実施しました。本プロジェクトは日本政府の補正予算によって支援され、2018年3月から2019年3月にかけて行われました。

トーゴ、ギニア、マリ、ニジェール、ブルキナファソ、ガーナ、ナイジェリア、そしてセネガルの8カ国で展開された本プロジェクトは、警察や兵員に対して現在行われている訓練内容の再検討や、訓練プログラムを通したテロ対策強化を目的として実施されました。

主な活動は、上記8カ国における平和維持要員のための訓練内容の再検討、ステークホルダーを巻き込んだ英語とフランス語での訓練マニュアル作成、そして訓練コースの開催(ガーナのKAIPTCでは2週間、マリとナイジェリアでは1週間)でした。

ナイジェリアで開催された訓練プログラムの参加者

マリで開催された訓練プログラムの参加者

 

8カ国での調査

2018年の6月から8月、派遣を控えた平和維持要員向け訓練コースに欠けている要素はないか明らかにするため、上記8カ国を訪れて調査が行われました。関係者からの聞き取り調査などを経て、具体的な訓練に足りない要素として、派遣前訓練におけるテロ対策モジュール、派遣地域での情報共有と機密情報の取り扱い、即席爆発装置(IED)の探知に関する知識、文脈分析と調停、交渉および人質行為などに関するものが確認されました。さらにアフリカの平和維持要員が取り扱う機材の質的改善も常に求められています。調査の報告書は、8月に開催された学習設計・開発(LDD)ワークショップで活用されました。

平和維持の現場におけるテロ予防の訓練コースを開催

ガーナのKAIPTCでは2018年10月22日から11月2日、アフリカの平和維持の現場におけるテロ予防に関する2週間の訓練コースが試験的に開催されました。

またナイジェリアでも、11月26日から30日にかけ、カドゥナ州ジャジのマーティン・ルーサー・アグワイ国際リーダーシップ平和維持センターにて、マリでもアリウン・ブロンデン・ベイウにある平和維持学校にて1月28日から2月1日にかけて開催されました。これらのコースでは、西アフリカの平和維持訓練教官計98人(ガーナ31人、ナイジェリア31人、マリ36人)の技能強化が行われました。

KAIPTCでの開講式には、ジタ・ウェルチUNDPガーナ事務所長、中村泰徳在ガーナ日本大使館一等書記官、KAIPTC副司令官を務めるアービン・アリーティー淮将が出席しました。訓練コースは、アフリカの平和維持の現場におけるテロリズム、地雷に関する啓発と化学・生物・放射能・核兵器、情報収集と機密情報共有、テロ対策のための法的・戦略的枠組み、女性と平和維持、テロリズムという5つのメインテーマに分けられたほか、想定シナリオに基づく訓練や演習も実施。この想定シナリオ演習は、対象国における様々な訓練機関によるテロ対策訓練の内容として不十分な側面を補強するものとなりました。具体的には、地雷に関する啓発と、マリのミッションに対するテロ行為にしばしば用いられている即席爆発装置が中心的に取り上げられました。

参加者はコースの一環として、訓練を受けた平和維持要員による奇襲や奇襲への反撃、事故現場保全および地雷啓発に関するシミュレーション演習を見学しました。また、拘束された人の取り扱いと科学捜査に関する演習では、拘束された人の取り扱いに用いられる手順のほか、犯行現場で証拠を保全する際の通常手続き方法について修得しました。これら3つの訓練プログラムへの参加者はいずれも、アフリカの平和維持の現場におけるテロの問題に対する理解に加え、さらに重要なこととして、自分たちが犠牲者とならないことについて、正しい知識を身に着ける機会となりました。

日本政府の補正予算による支援で実施された当プロジェクト。開始式では駐ガーナ日本国特命全権大使の姫野勉氏と共に

アクラで開催されたプロジェクトの開始式での議論の様子

日本からの専門家が講師として参加

ガーナでの訓練コースには、「テロ対策能力向上プロジェクト」に対する継続的技術支援の一環として、日本から駐日英国大使館の湧川いづみ氏が講師として参加しました。本プロジェクトは、湧川氏を含む日本からの専門家が様々な技術的な知識や専門性を現地参加者と共有する場となっています。湧川氏は上記プロジェクトの中で、KAIPTCの研究者2名と共同で「女性と平和維持、テロリズム」に関するモジュールを策定しKAIPTCで発表しました。湧川氏の豊富な経験を活かした訓練内容になっており、参加者からも女性と平和維持、テロリズムの分野に関する講義と専門知識を高く評価する声が上がりました。

これらの活動はKAIPTC、UNDPガーナ事務所、そして日本との既存の協力関係をさらに強化するものとなりました。

訓練コースに講師として参加した駐日英国大使館の湧川いづみ氏 (左端)