開催報告: TICAD7記念イベント「希望の大陸"アフリカ”を知る」

紺野美沙子UNDP親善大使トークショー & 映画「シンプル・ギフト ~はじまりの歌声~」上映会

2019年8月1日

紺野美沙子UNDP親善大使と近藤哲生UNDP駐日代表 Photo: UNDP Tokyo

2019年8月28日~30日、横浜で第7回アフリカ開発会議 (Seventh Tokyo International Conference on African Development: TICAD7)が行われました。この機会に、映画「シンプル・ギフト ~はじまりの歌声~」上映会と紺野美沙子UNDP親善大使によるトーク・ショーを7月24日に開催しました。

ドキュメンタリー映画「シンプル・ギフト~はじまりの歌声~」は親を失くし絶望の淵に立つアフリカの子どもたちと、同じ境遇にある東北の津波遺児が、ブロードウェイの舞台に立ってともに歌い踊るというプロジェクトから希望を見つける姿を描いた、愛と再生の物語です。ナレーションは、女優でUNDP親善大使の紺野美沙子さんが担当。紺野大使は、第6回アフリカ開発会議がケニアで開催された折には現地を視察し、人々の生きる姿と将来への希望を見てきました。

上映後、篠田伸二監督に初の長編作品を作られたきっかけについてお話していただきました。「同映画で取り上げたあしなが育英会の玉井会長には学生時代に大変お世話になり、あしなが運動で一緒に長年関わってきた。玉井さんは、最初は国内でずっと交通事故で親を亡くされた子どもたちを中心に、その後は災害遺児などを支援し、国内においての認知度がとても高かった。その後国外にも支援対象を広げ、アフリカの遺児についても世界に広める方法はないか、と考えていた」と説明しました。そして、小説「あしながおじさん」の創作100年を記念し、同映画の製作が決まったと説明しました。

次に、映画に登場している子どもたちのその後について、「 “将来は医者になりたい” “誰かを助けられる大人になりたい” “勉強が楽しくて仕方がないので将来は弁護士になりたい”と願っているようです」と話し、撮影後にまた少し大きく成長した子どもたちの写真を見せてくれました。

最後に、「シンプル・ギフト」という映画のタイトルをつけた理由について、「“自分の居場所を見つけること、それは天からの贈り物”という歌の歌詞からとりました。普遍的なテーマであり、日本だけでなく全世界に共通するのではないでしょうか。また、シンプル・ギフトを見つけられることは簡単なことではないが幸せの力なのではないかと思いました」と強い思いを述べました。

映画について語る篠田伸二監督

続いて、同映画でナレーションを務めた紺野大使とUNDP駐日代表・近藤哲生とが対談。冒頭、近藤からUNDPは国連の中で「貧困削減のために開発を進める役目を担う機関」であると説明、自身が赴任していたチャドについて説明しました。人間開発報告書によると、日本は上から数えて19番目、チャドは最下位から数えて4番目であると紹介、アフリカの中でも極めて貧しい国であると述べました。また、チャドの最優先課題の1つが、妊産婦死亡率を下げることであったと述べました。日本では、10万人に3人ぐらいの方が死亡するのに対してチャドでは、10万人の人口に対して800人の方が亡くなってしまう。その原因は、「女の子に人権が認められていなく、教育を受けたり、医療を受けたりするチャンスが少ないから」と説明しました。

首都ンジャメナから離れた農村の学校を視察したところ、「高学年(6年生)になると女の子が少ししかいなくなり、中学校になると女の子は全くいなくなってしまいます。原因は、経済的な理由で会ったこともない人のところに嫁いで子供を産むためです」と述べ、妊産婦死亡率が高い理由の1つが早期婚であると説明しました。近藤はデビ―大統領(90年~現職)に本人の意思に基づかない早期婚を禁止する法律制定を要請したところ、すぐには承諾してくれなかったものの、継続的な働きかけによって、2015年3月に早期婚を禁止する法律に大統領が署名したというニュースが届き嬉しかったと述べました。

続いて、紺野大使は2003年に訪れたガーナについて説明。HIV/AIDSで親を亡くした子どもたちがクイーン・マザーと呼ばれる地元の婦人の方たちによって自分の子のように育てるという相互扶助の仕組みを知ったと話されました。紺野さんは、その現状を見て「親の気持ちはみんな一緒だし、アフリカを近く感じるようになりました。子どもというのは自分が産まれてくる家や地域を選べないけれど、先進国と途上国の格差を埋めるためにはどうすればよいのか日々考えています」と会場に思いを伝えられました。

また、2008年に訪問したタンザニアについても説明。ビクトリア湖の近くの村で、太陽光発電が設置され学校や工場などに電気がつくようになり、子どもたちからは“夜も勉強できるようになった”という声を聞き、「電気があると大きな希望が生まれます」と説明しました。また、こうした取り組みに対して、「以前は国際援助というと国際機関やNGOなどの団体が中心となって担うものと考えられていましたが、現在では民間企業や若い起業家が率先してアフリカで活躍するようになりました。」と変化についても触れました。

上映会とトークを通して、参加者にはアフリカへの思いを深め、またアフリカの現状と人々の抱える思いや希望についてより詳しく知って頂けたのではないでしょうか。たくさんのご来場、ありがとうございました。

満員御礼!