TICAD7 アフリカビジネス セミナー 岡山にて開催

2019年6月22日にJICA中国主催で開催されたアフリカビジネスセミナー

2019年6月22日

国連開発計画(UNDP)は、2019年6月22日(土)にJICA中国主催で開催されたアフリカビジネスセミナーを日本貿易振興機構岡山貿易情報センター(JETRO岡山)と共催しました。本セミナーは、本年8月に横浜で開催される第7回アフリカ開発会議(TICAD7)を見据え、より多くの企業の皆様にアフリカビジネスのヒントを掴んで頂くべく、地方5都市にて開催しています。

冒頭、三角幸子・JICA中国所長が、TICAD7に向けて日本の民間企業のアフリカ進出を切望する声がこれまで以上に高まっているとし、アフリカをテーマにしたセミナーに対して80名近くの参加者が集まったことに謝意を述べました。

続いて、小林龍一郎・外務省アフリカ部TICAD事務局次長補が、ODAによる開発援助政策を協議する場として1993年にスタートしたTICADは、アフリカの目覚ましい発展と経済成長を背景に、近年は援助より投資を求める声が高まっているとし、官民一体となってアフリカ進出支援を行っていくと述べました。また、本セミナーを通じて岡山の関係者からの関心と熱意をTICAD本番に反映させていくと決意を述べました。

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続いて、楽天株式会社プラットフォーム戦略統括部戦略企画部企画課・森本有紀氏より、同社のサステイナビリティ活動とアフリカでの取組みについて説明がありました。楽天は「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」ことをミッションに掲げ、SDGsを始めとする社会課題の解決に取り組む団体と楽天社員がプロジェクトチームを組成し、テクノロジーを活用した課題解決に半年間取り組む「Rakuten Social Accelerator」というプログラムを有しています。2018年には外部6団体の事業に80名の楽天従業員がボランティアとして参画し、うち1団体であったWASSHA社への事業支援を通じてアフリカへの関与が始まったと説明しました。日本発のスタートアップであるWASSHA社はIoTテクノロジーを活用しタンザニアの未電化地域へ電力サービスを提供する事業を中心に、本事業で構築した小売店ネットワークを活用してEコマース事業等の新規事業の開発中であり、Rakuten Social Accelerator事業を通じて、楽天従業員が市場調査や卸売モデルの実証実験をサポートしました。森本氏は、半年間の支援期間は終了したものの、従業員がアフリカ事業に参画することで、社内でアフリカ進出の機運が高まったと述べました。

次に、自治体のアフリカ進出支援事例として、神戸市企画調整局新産業部企業立地課の杉迫直子氏は、同市がアフリカへのビジネス・ゲートウェイとなるべく、ジブチ・タンザニア・ルワンダへのミッション派遣やABEイニシアチブ生のインターンの受入先企業とのマッチングの推進、ビジネスセミナーの開催、アフリカ神戸リエゾンオフィサーの配置など、様々な進出支援を行っていると説明しました。アフリカ市場におけるビジネス創出件数10件を目標に、特にIT分野等でビジネスチャンスが期待できるルワンダと神戸の経済交流を促進し、両国の企業間での新たなビジネス創出を図っていくと述べました。

その後、食品乾燥機メーカーの大紀産業株式会社・代表取締役社長の安原宗一郎氏より、スーダンでのビジネス展開について説明がありました。農業高齢化により日本国内における設備投資が伸び悩む中、海外からの需要が増加傾向にあるとしたうえで、特に高温多湿・コールドチェーンの未発達な地域で大きな需要が見込める、中でもアフリカは人口増加が顕著であり市場の可能性に着目したと述べました。スーダンでの現地調査を通じて大規模なタマネギ乾燥工場が稼働停止し、大量の生玉ねぎが市場に流入し余剰が発生、価格が大暴落したことを知り、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業制度を利用して、同国で電気乾燥機の展開を開始したということです。同国では機材の納入のみならず、技術指導や女性加工組合の体制作りも支援、農村部の現金収入・雇用の機会創出に貢献しながら、電気乾燥機の販売ルートの確立を目指すと述べました。

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こうした発表を受け、このような日本企業のアフリカ進出を後押しし、日本とアフリカの双方の社会経済発展を目指すため、UNDP、JETRO、JICAが連携して提供する支援について発表しました。

JICAアフリカ部アフリカ第一課の渡辺英樹氏は、アフリカの経済成長率、人口増加予測、直接投資残高、携帯電話普及率等を引き合いに、アフリカが日本にとっての巨大市場になりうると説明したうえで、諸外国に比べて日本企業の進出余地が存在するとの指摘を行いました。一例としてナイジェリアでは中国企業3,000社近くが進出しているのに対し、日本企業は40社程度に留まると述べました。TICADを通じた長年の政策対話と支援実績(ABEイニシアティブ等)をベースに、アフリカと日本には強い信頼関係があるとし、TICAD7の成功には一層の官民連携と民間企業の積極的な参加が必要であると説明しました。そのうえで、アフリカ進出に関心があるのであれば、今後の相談窓口としてJICA中国を活用して欲しいと紹介しました。

次にUNDP近藤千華・TICAD連携専門官より、JICA・JETRO・UNDPが連携して日本企業のアフリカ進出を支援していくこと、ビジネス展開の入り口から事業拡大までのそれぞれの過程において、三機関の強みを活かした支援を用意していること、窓口はどこでも構わないので三機関のいずれかに相談があれば各機関連携して支援していくと説明しました。JETROは日本各地に48事務所(注:11月から49カ所)があり気軽に相談に行けること、また60年のビジネス展開支援の実績があり各種アドバイザリーサービスが充実していること、JICAは各種調査・実証事業の資金支援が可能であり、ODA事業との連携を図ることが可能なこと、UNDPはアフリカ53拠点の事務所があり、現地で政府関係者のみならず商工会等にも強力なネットワークがあると述べ、アフリカ進出のサポートに三機関を活用してほしいと話しました。

さらにTICADはアフリカ進出のきっかけになりうると説明し、TICADVIにてバイオマス炭化装置技術を展示し多くのアフリカの国より引き合いを得て、現在JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業を活用してケニアでパイロット事業を行う石川県・金沢の明和工業を紹介しました。さらに、事業が軌道に乗り拡大を目指すフェーズにおいては、ビジネス行動要請(BCtA)という長期的視点で商業目的と開発目的を同時に達成できるビジネスモデルへの認証制度が活用できると述べました。

最後に、JETRO海外調査部の小松崎宏之氏はJETROのサービスとして、ウェブサイトで提供する国・地域別情報、貿易投資相談、現地出張時の海外ブリーフィング、現地企業リストアップなどが可能な海外ミニ調査等について、積極的に活用頂きたいとしました。更にアフリカにおける急速なデジタル化や起業に着目し、今年度から「スタートアップ連携促進デスク」を設け、現地スタートアップとの連携でアフリカでの事業拡大を試みる日本企業を積極的に支援していくと説明しました。また、3機関の事業を活用しながらアフリカで活躍する日本企業の事例として、LPガスボンベに搭載するスマートメーターを自社開発し、利用分だけモバイル決済するシステムを開発したタンザニアのスタートアップ企業であるKopaGas社に対するサイサン(埼玉県)の出資、スマイリーアース(大阪府)によるウガンダ産オーガニックコットンを活用して環境配慮に工夫したタオル生産やウガンダと大阪の友好都市交流への貢献、農地の保水性を高める超節水技術を持つ鳥取再資源化研究所(鳥取県)がアフリカ各国で実証実験を重ね、モロッコでの現地法人設立に至った案件について説明しました。

最後に、JICA中国総務課長の大竹茂氏が、本セミナーやTICAD7をきっかけに是非多くの企業にアフリカ進出をして欲しいと期待を込めて閉会挨拶をしました。

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日本の企業にとって成長の機会となるアフリカ市場についてきっかけや思いから経験に基づくヒント、さらには進出を検討する際の支援制度などアフリカ進出に係る網羅的な情報を提供するイベントとなりました。UNDPは、JICA、JETROと連携して同様のビジネスセミナーを日本各地で開催し、アフリカの発展に貢献する日本企業を応援していきます。