国境を越えた起業:TICAD7でSDGsに焦点をあてたアフリカ・日本スタートアップ・ピッチを開催

2019年11月27日

主要な開発課題へ取り組むには、大胆で斬新、かつ革新的な解決策が必要になります。

2019年8月30日、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の公式サイドイベントとして開催された「アフリカ・日本スタートアップ・ピッチ:SDGs達成へのイノベーション推進とパートナーシップ発掘」には、アフリカと日本からスタートアップ計24社が登壇し、持続可能な開発目標(SDGs)に体現された今日の喫緊の課題に取り組むための先鋭的で将来志向の解決策を披露しました。医療からごみ処理、輸送に至るまで、起業家たちの扱う専門分野は異なりますが、技術とイノベーションを活用し、社会に真の変化をもたらそうという情熱は同じです。各方面からの参加者は350人に上り、3社が協賛企業賞を受賞しました。

このイベントは国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(JETRO)と国連開発計画(UNDP)が、TICAD7を契機に発足した3者間パートナーシップに基づいて開催しました。冒頭で挨拶したアヒム・シュタイナーUNDP総裁は、スタートアップ企業やビジネスが社会でさらに幅広い責任を担わねばならないことを改めて強調。「企業の役割はビジネスだけではありません。その役割は、国家の発展に寄与し、雇用と機会を創出することにもあります。単にビジネスでお金を稼げばよいというわけではなく、これまで取り残されてきた人々の利益となるように、技術を活用する必要もあるのです」と語りました。

イベントの第1部では、アフリカ全土から応募のあった500社から選抜されたテック・スタートアップ7社が「SDGs達成へ、イノベーションの推進」というテーマの下、それぞれの事業を紹介し、現地でのインパクトとスケールアップの可能性を示しました。各社によるピッチに続き、アフリカと全世界で幅広い経験を有するベテランのベンチャー・キャピタリストや専門家、実務者がフィードバックやコメントを寄せました。特筆すべき例として、エジプトのスタートアップで、処方薬の配給を促進するオンデマンド・プラットフォームを提供するChefaa社は、「Asia Africa Investment Consulting(AAIC)賞」を受賞しました。同様に、ガーナのスタートアップで、安全な生体認証と金融包摂を通じて人々を医療につなげるプラットフォームを運営するHealth Direct Global社には、PwC Japan賞が授与されました。

「Asia Africa Investment Consulting(AAIC)賞」を受賞したChefaa社によるピッチの様子

授賞式で、PwC Japan賞を獲得したHealth Direct Global社

第2部の「新たな市場開拓連携パートナーの発掘」では、日本やアジア全域の企業との協業を望むアフリカ7カ国のディープテック系スタートアップ10社がピッチを行いました。運輸サービスの電子決済から健康保険やエネルギー分野でのイノベーションに至るまで、起業家たちは4分間のピッチで、日本の潜在的パートナー企業の関心をえるため、それぞれの個人的なストーリーをビジネスの展望と絡めて語りました。この中からは、リアルタイムでデータ追跡を行う交通安全IoTデバイスによってオートバイ利用者を保護するモロッコのスタートアップCasky社が、丸紅賞を授与されました。

午後の部では、アフリカ進出の経験や計画を有する日本のスタートアップ7社が登壇しました。これらのスタートアップ企業は、情報技術(IT)教育から養殖まで、幅広い部門で事業を営んでおり、中には3D印刷技術を用いて、低所得世帯向けの安価な人工装具を生産し、この技術を近い将来、アフリカ諸国にも普及することを望むベンチャー企業(インスタリム社)もありました。

このイベントと並行して設けられたネットワーキングスペース内のブースでは、登壇したスタートアップ企業各社との商談も行われ、事業の加速に向けて日本企業とのマッチングが図られました。

多くの国では、スタートアップ企業と中小企業(SMEs)が経済の活力源となっているだけでなく、持続可能な成長の力強い担い手となれる可能性も秘めています。「アフリカに躍進を!ひと、技術、イノベーションで」というTICAD7会議の全体的テーマにもあるとおり、こうしたスタートアップ企業は、ビジネスによる解決策を通じて開発課題にどのように取り組めるかを示してくれます。UNDP総裁は「今の世代では、ビジネス界のリーダー達が次に起こることを決定づけるようになっています。本日のピッチイベントに参加したスタートアップ企業が、社会課題解決策の一部となって、開発に貢献することを期待しています。皆さんは私たちの未来のカギを握っているのです」と述べました。UNDPは引き続き、イノベーションを推進してつなぎあわせ、若い人材のエンパワーメントを図り、SDGsの達成に向けた幅広いパートナーシップを促進していきます。