SDGsの達成にカギ:ローカライゼーションとイノベーションを推進するマルチセクター・パートナーシップ

2019年11月28日

国連開発計画(UNDP)のアヒム・シュタイナー総裁は、UNDPと神奈川県の共催で行われた第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の公式サイドイベントで、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けたパートナーシップとローカライゼーションの重要性を強調しました。

「SDGsは国連総会の議場から生まれたものではあっても、私たちが抽象的な意味で語る目標として意図されたものではありません。人々が暮らし、決定が下され、地方自治が行われるローカルな現場の現実に近づけば近づくほど、SDGsは真価を発揮するのです」

国連開発計画(UNDP)のアヒム・シュタイナー総裁

「SDGs達成へ マルチセクター・パートナーシップの推進」と題したイベントでは、官民の著名な登壇者が、アフリカと日本でSDGsの達成を加速するためのパートナーシップについて検討しました。その一環として、UNDPと神奈川県は、SDGs達成に向けた日本の地方自治体の参画を加速するための連携を発表しました。

神奈川県は、SDGsの推進と実施で先駆的な役割を果たしています。黒岩祐治知事は「SDGs日本モデル」宣言を発表し、全国140自治体の賛同を得ました。この宣言は本年7月、ニューヨークの国連本部で開かれたハイレベル政治フォーラムでも紹介されています。

UNDP総裁は、神奈川県とのパートナーシップがSGDsのローカライゼーションに向けた取り組みで強力な相乗効果を生み出すと述べました。シュタイナー総裁は「UNDPの任務は、イノベーションとベストプラクティス、サクセスストーリーをつなげることにあります。この精神のもと、私は今後数年間、神奈川県と積極的に協力し、地方レベルでのSDGs推進の妥当性と有効性を実証できることを大きな誇りに思います」と語りました。さらに日本政府も、地方自治体の特筆すべき取り組みを認定し、地方自治体によるSDGsへの主体的な取り組みを奨励しています。阿部俊子外務副大臣は、政府は「SDGs未来都市」の選定を通じ、日本の都市がSDGs達成に多く取り組んでいることを高く評価していると述べました。また、政府は「ジャパンSDGsアワード」を通じて、SDGs達成に向けて国内的または国際的に顕著な取り組みを行っている模範的な企業や地方自治体、市民社会団体を表彰していると説明しました。

黒岩祐治 神奈川県知事

黒岩知事と対談を行ったガンビア初の女性市長であるバンジュールのロイ・マリーク・ロウェ市長は、アフリカの観点から知見を提供し、人々(people)、豊かさ(prosperity)、地球(planet)、平和(peace)、パートナーシップ(partnership)が、持続可能な開発の達成にとって「基本の5P」であると述べました。ロウェ市長は、こうした原則が包摂的で公平な成長を目指す地方レベルでの政策決定の指針としてどのように役立つかについて論じたうえで、次のように述べました。「SDGsの実施と達成は、政府だけの責任ではなく、市民の一人ひとりがこれに関与せねばなりません。それによって、市民のエンパワーメントが確保されるとともに、最も重要なこととして、誰一人取り残さないことが可能になるのです」

バンジュールのロイ・マリーク・ロウェ市長

これに続くパネルディスカッション「SDGs達成に向けたイノベーションの実践」では、SDGsの達成に向けた革新的なアイディアとその実践事例が披露されました。ナイジェリアを本拠とするトニー・エルメル財団(TEF)でCEOを務めるイフエインワ・ウゴチュク氏は、10年間で1万人のアフリカ人起業家の養成に向けて1億米ドルを拠出する同財団の新たなプログラムについて触れました。このプログラムを修了したCHIL A.I Lab(ウガンダ)創設者のシャミム・ナブマ・カリサ氏は、AI搭載の家庭用スクリーニング試験キットの提供により、アフリカで癌を減らすための取り組みを紹介しました。Closed-Loop System Ventures(カメルーン)の創設者であるパトゥ・ンダンゴ・フェン氏は、TEFやUNDPのYAS!プログラムとのパートナーシップが、ゴミを価値のある消費財に変え、循環経済を促進するという事業の加速にいかに役立ったかについて語りました。