パレスチナの若者が来日:農業をテクノロジーで変える「アグリテック」の取り組みを学ぶ

2020年2月18日

NPO植物工場研究会にて、太陽光型植物工場について説明を受ける参加者

2020年2月、国連開発計画(UNDP)は、「パレスチナにおける平和と繁栄のツールとしてのイノベーションやICTセクター開発」プロジェクトの一環として、ガザ地区出身の若者3名を日本に招聘し、1週間にわたる研修を行いました。3名の若者は、UNDP/PAPP(パレスチナ人支援プログラム)が、昨年10月に行った「Ja-Pal’s Digibiz Competition」というビジネスアイディア・コンテストの受賞者で、コンテストのテーマは「農業と技術革新」でした。

参加者は、研修プログラムを通じて、人工光型・太陽光型自然工場や垂直農法など多様な農業方法を見学しました。また水不足や土壌汚染などの深刻な問題に対処するために開発されたハイドロゲル膜を用いた農法や人工知能を使った自動野菜収穫ロボットなど最先端の農業技術も学びました。

メビオール(株)が開発した水や養分だけを通す特別なフィルム「アイメック」を使用した植物栽培システムを見学。

AIを用いた自動野菜収穫ロボットを開発するinaho(株)のチームの皆さんと記念撮影。

(株)モンスター・ラボにて、同社が進めるガザ地区におけるIT人材雇用機会の創出を目指したSDGsプロジェクトについて議論。

国連大学サステイナビリティ高等研究所と共催で行ったイベントにて、受賞したアイディアをピッチする参加者ら。

UNDP近藤哲生駐日代表を訪問。

千葉大学・NPO植物工場研究会が運営する多段式栽培工場の実証事業を見学。

「ガザ地区は、パレスチナの中でも非常に厳しい経済状況にあり、人口の53%以上が貧困層です。[1]大学卒業後も多くの若者が職にありつけず、私もそんな若者の一人です。ITや農業分野の発展は、経済発展のカギになると思います。日本で最先端のアグリテックの取り組みを学び、型にはまらない考え方の重要性を感じました。ガザに戻ってからも、新しいテクノロジーを追求し続け、国の発展に貢献したいです」と参加者のアドナン・アブムアメールさんは意気込みを語りました。

プログラム最終日には、外務省を訪問し、高橋克彦中東アフリカ局長にパレスチナの現状や研修プログラムの成果を報告しました。

高橋克彦中東アフリカ局長は、「日本政府は、パレスチナの経済発展を促す「平和と繁栄の回廊」構想の旗艦事業であるジェリコ農産加工団地(JAIP)の開発に取り組んできました。パレスチナの更なる発展を促すアグリテックなどIT分野への支援も引き続きUNDPと協力して進めていきたいと思います」と参加者に対して語りました。


[1] パレスチナの貧困率:29.2%(西岸地区13.9%、ガザ地区53.0%)(パレスチナ統計局、2017年)

国連大学サステイナビリティ高等研究所と共催で行ったピッチ・イベント終了後に、参加者全員で記念撮影


「パレスチナにおける平和と繁栄のツールとしてのイノベーションやICTセクター開発」について:

「平和と繁栄の回廊」構想計画に基づき、このプロジェクトでは、パレスチナにおけるICTやイノベーション分野の開発に取り組んでいます。特に若者のリーダーや起業家に対し、ICTツール提供やアクセス改善などを通じて、農業分野における雇用機会の創出を目指しています。このプロジェクトは、日本政府からの資金供与を受け、UNDPが実施しています。