開催報告:AFRI CONVERSE第3回「より良い社会へ:女性と少女の力を活かして」

ジェンダー格差とその解決策が最重要議題に

2020年12月11日

(上段左から)山口綾JICA国際協力専門員、アンダーソン・チコモラ マラウイ農業・灌漑・水開発省普及局副局長、アルカ・バティア UNDPナミビア常駐代表 (下段左から)ジェネット・レマ氏 マネージング・ダイレクター Gaber Wear社、近藤哲生 UNDP駐日代表、近藤千華 UNDPアフリカ局TICAD連携専門官

UN Womenと国連開発計画(UNDP)が9月、COVID-19 Global Gender Response Trackerで公表した新しいデータによると、世界のほとんどの国は、女性と女児を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)による経済的、社会的危険から守るために、十分な策を講じていないということが明らかになりました。

COVID-19が全世界の貧困層に影響を与えると予測される中、女性(特に再生産年齢の女性)には、不当に大きな悪影響が及ぶと想定されています。2021年までに、極度の貧困状態(1日1.90米ドル以下)で暮らす25歳から34歳の女性の数は、男性100人に対して118人に上ると見られますが、この格差は2030年までに、男性100人に対して女性121人にまで拡大すると予測されています。

女性に対するCOVID-19の悪影響に鑑み、「より良い社会へ:女性と少女の力を活かして」というテーマで最近開催された第3回AFRI CONVERSEには、アフリカと日本の官民セクターから合わせて200人近くの参加者が集い、ジェンダー課題とその解決の可能性について話し合いました。

アルカ・バティアUNDPナミビア常駐代表は開会の辞で、2016年のアフリカ開発報告書に触れ、不平等が人間開発の前進を脅かし続けていることを指摘しました。その一方で、バティア氏は報告書で出された数多くの提言の一つを取り上げ、女性の能力と機会を広げることが、持続可能な人間開発の中心的要素になると述べました。

「つまり、女性と男性の両方に、機会を得るための自由がない限り、また、全世界の女性の能力強化への投資がない限り、私たちは持続可能な開発目標(SDGs)の達成を期待できないということです。女性がある種の歴史的、構造的な不平等に直面するアフリカでは、これが特に当てはまります」

バティア氏は、アフリカではジェンダー格差だけで、GDPが6%も引き下げられていることを改めて参加者に強調しました。そして、COVID-19のパンデミックに真剣に取り組まなければ、男女間の貧困格差がさらに悪化しかねないと警告しました。バティア氏はさらに、アフリカでより良い社会を達成するための機会には、社会保障の強化、トレーニングと教育の拡充、雇用創出を含めるべきだと述べています。

山口綾JICA国際協力専門員(ジェンダーと開発)は、女性の経済的エンパワーメントを阻む要因として、資源に対する女性のアクセスや管理権、決定権が制限されていること、女性の無償ケア労働の負担が大きいこと、ジェンダーに基づく暴力が蔓延していること、社会基盤(インフラ)が未整備であること、ジェンダー視点に立った政策やメカニズムが欠如していることの5つを挙げ、その根底にはジェンダーに基づく固定的な性別役割分業や差別的な社会規範があると述べました。

山口氏は今後のJICAの取組みとして、アフリカの女性と女児が直面する障壁を取り除くためのソーシャル・ビジネスの促進を図っていくとし、「アフリカの経済発展の担い手として、そして社会変革のリーダーとして、女性の起業家や農民に対する支援を続けていきます」と述べました。

山口氏はさらに、JICAによるCOVID-19の緊急対応と復興支援においては、女性の経済的エンパワーメントの促進が優先取り組み分野の一つであると述べました。

マラウイ農業省普及局副局長のアンダーソン・チコモラ氏は、マラウイの農業セクターにおけるジェンダー課題を明らかにしました。チコモラ氏によると、こうした課題には、農村社会における資源や便益、情報や技術に対する女性のアクセスと管理権の制限が含まれます。チコモラ氏はさらに、女性が意思決定過程にほとんど参画できていないことにより、世帯やコミュニティ、組織、さらには国家のレベルでの生産性という点で、女性が不利な立場に置かれていると述べました。

「結局のところ、こうした問題がある結果、女性は周りの男性ほど豊かになれないことが分かっています」チコモラ氏は、農業省におけるジェンダー主流化の取り組みは、政策・プログラム、職場、コミュニティ・世帯の3つのレベルでそれぞれ実施していると語りました。そして、コミュニティ・世帯レベルの取り組み事例として、JICAとともに実施している小規模園芸農家を対象にしたプロジェクト(SHEPプロジェクト)について紹介しました。

しかし、チコモラ氏はその一方で、COVID-19によりコミュニティ・世帯レベルの取り組みに遅れが生じているという懸念も表明しています。COVID-19禍ではラジオやオンライン、SMSなどを通じた農業普及を行っていますが、国のガイドラインの50%またはそれ以下しかサービスの提供ができていないと分析しています。

エチオピアの企業Gaber Wearでマネージング・ダイレクターを務めるジェネット・レマ氏は、繊維・被服産業で女性が果たす役割について触れ、社会的、経済的な制約のために、女性は依然として、起業家としての潜在能力を十分に発揮できないでいると述べました。

レマ氏は、COVID-19の世界的な感染拡大と家庭における伝統的な役割が、女性がキャリア目標を達成する上で大きな負担となっていることを明らかにしました。アフリカの女性起業家が現在もなお直面している課題としては、社会的制約、資本へのアクセスの制限、伝統的に「女性の仕事」とされているセクターの存在、家庭での性別役割分業などが挙げられます。

レマ氏によると、COVID-19の世界的大流行は、アフリカの女性起業家に特に大きな打撃を与えており、彼女たちはこれまでのビジネスのやり方の変更を余儀なくされています。ただ、直面する課題によって、比較的うまくこれに対応している女性もいると説明しました。

AFRI CONVERSEはこれからも2か月に1回、アフリカと日本から幅広いステークホルダーを動員し、第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)に向けてモメンタムを醸成していきます。