AFRI CONVERSE 2021 第6回 特別セッション「Repositioning Africa for a Decade of Shared Prosperity」

11月5日にオンラインで開催

2021年11月26日

この25年間で初めて、アフリカは経済不況に見舞われています。COVID-19の流行により、4,000万人以上の人々が再び極度の貧困状態に陥り、ここ数十年で得られた開発の成果が損なわれました。新型コロナウイルス(COVID-19)の流行により、社会経済的な進歩が抑制されるなか、生活を改善し、持続可能な開発を促進するには、天然資源のガバナンスを改善し、不法な資金の流れを抑制し、低炭素化・気候変動に強い解決策への投資が不可欠です。

こうした背景を受け、UNDPと国際協力機構(JICA)は、「Repositioning Africa for a Decade of Shared Prosperity」をテーマとするAFRI CONVERSE特別セッションを共催し、ハイレベルなパネリストと共に、UNDPの「Strategic Offer for Africa」の重点分野に表されるような分野横断的テーマについて議論を展開しました。次回のアフリカ開発会議(TICAD8)は、2022年にチュニジアで開催される予定です。

パンデミック以前のアフリカ大陸では、安定した経済成長、ガバナンスの改善、社会的・物理的資本への投資の増加、暴力的紛争の減少などが見られました。2020年までに、27のアフリカ諸国が高所得国または中所得国に分類され、アフリカ大陸の外国直接投資収益率は11.4%と、世界平均の7.1%を大きく上回っています。

「パンデミックの世界的な影響は、アフリカ大陸の財政、生産性、貿易に壊滅的な影響を与えました」と、UNDP総裁補兼アフリカ局長のアフンナ・エザコンワは述べ、パンデミックが社会的セーフティネットに与える影響に触れ、アフリカ諸国は拠出・非拠出型の持続的な社会保護制度を構築する必要があると強調しました。また、国内外のショックを和らげ、レジリエンスの向上に貢献するような開発の重要性を説きました。

さらに、エザコンワ局長は、UNDPの「Renewed Strategic Offer for Africa」の中で、「構造転換」「天然資源のガバナンス」「安価で持続可能なエネルギー」「気候変動」「女性と若者のエンパワーメント」「平和と安全保障」という6つの主要なインパクトエリアを強調しました。

特に、アフリカ大陸の豊富な鉱物・農業・知的資源は経済復興のきっかけとなるものの、不法な資金の流れによって年間約900億ドルが失われていると指摘しました。 「もし、この金額の一部でも回収できれば、大陸の天然資源を持続可能な開発と繁栄の共有に役立てることができるでしょう。コモンズ(共有財)と市民のプラットフォームを保護し、天然資源のガバナンスに関するブレーントラストを設置することによってアカウンタビリティの制度を強化することができます」。

また、エザコンワ局長は、アフリカ大陸が気候変動に対して不釣り合いなほど脆弱であることを踏まえ、大陸全体でグリーンの移行を公正に進めることが重要であると強調しました。「気候変動と生態系の衰退が進めば、2030年に向けて貧困と避難民が増加することとなり、新型コロナウイルスからの復興の妨げとなる」と述べました。

JICA上級審議役の加藤隆一氏は、アフリカ連合開発庁(AUDA-NEPAD)との共同イニシアティブである「Home Grown Solutionsアクセラレータープログラム」に触れ、アフリカ大陸におけるコロナ禍対応への日本の貢献を強調しました。この取り組みでは、コロナ禍による経済的低迷の影響を打ち消すために、医療保健分野のアフリカスタートアップ企業・中小企業をサポートしています。

加藤氏は次のように述べました。「JICAは、限りないビジネスチャンスを秘めたAUDA-NEPADとのパートナーシップや『NINJA(Next Innovation with Japan)』という新興企業加速プログラムを通じて、コロナ禍に成長したアフリカ発ソリューションのパイロット化と拡大を幅広く支援してきました。これらはアフリカの革新とリープフロッグを促進するためのカギです」

同氏はまた、コロナ禍であってもアフリカで大きく前進した2つの社会開発プロジェクトの成功も指摘しました。

1つ目は「みんなの学校」プロジェクトで、これは2004年にニジェールの23の小学校で始まり、今ではアフリカの8カ国で約5万3,000の小学校と中等学校に広がりました。2つ目のプロジェクトはSHEP(市場志向型農業振興)アプローチで、ケニアとルワンダで大きな成功を収めた後、現在ではアフリカの26カ国で採用されています。

さらに同氏はコロナ禍中と復興に向けたJICAの取り組みを紹介し、TICAD8は、アフリカが回復力のある、包摂的かつ豊かな大陸になるための重要なマイルストーンになることが期待されていると強調しました。

イベントはこちらからご覧いただけます

Asia Africa Investment & Consulting(AAIC)のCEO兼ディレクターである椿進氏は、アフリカで行われている投資に対する刺激的なキーポイントの一つは、「リープフロッグ」イノベーションであると述べました。

AAICはアフリカにおいて、フィンテック(モバイル決済、マイクロ保険)、ヘルステック(AI診断/読影、遠隔医療)、モビリティーテック(ドローン物流、Uber物流)など、実用性の高い大規模な分野に力を入れており、その投資から大きなリターンを得ています。

椿氏は、アフリカが生み出す数多くの革新的な現地発ソリューションがアフリカ大陸を賢明な投資先にしており、外部のパートナーがアフリカ大陸を10年間の繁栄のために位置付けることができると付け加えました。その一例としてケニアの地熱発電が挙げられ、外国人投資家の関心を集めていると述べました。 ケニアでは2000年以降、地熱発電量が急速に増加しており、エネルギー需要が急増しているシンガポールなどの国に輸出することができると述べました。

African Centre for Economic Transformation(ACET)のリサーチ&ポリシー・エンゲージメント担当シニアディレクターのエド・ブラウン氏は、アフリカの未来の鍵を握るのは変革であると語りました。ブラウン氏は、アフリカの経済は、製造業の雇用が不足していること、技術力と生産性の低さが対外的な競争力の低さに繋がっていること、資源の動きが鈍く製造業に雇用が生まれないと述べ、アフリカ経済はレジリエンスを高めるために変革しなければならないと説明しました。

「アフリカ諸国は、豊富な資源、活気に満ちた人口、熱心な労働力を持っているにもかかわらず、本来あるべき姿に到達していません。人々の生活を向上させるためには、すぐに変化を起こせるような政策課題に焦点を当てる必要があります」とブラウン氏は述べました。

さらに、新型コロナウイルスの大流行がアフリカの経済的変革の加速を促したと強調し、各国が変革を加速させる方法が多数あるなか、ACETの政策として以下を推奨しました。

  • 資源の動員と管理の強化
  • デジタル化の加速
  • 政策立案能力の向上
  • ビジネスおよび投資環境の構築と実現

最後にブラウン氏は、外部パートナーの支援をより地域に根ざしたものに変え、国境を越えた介入のインパクトを増幅させる必要性を強調しました。

UNDPアフリカ局のチーフエコノミスト兼戦略・分析・研究部門長のレイモンド・ギルピンは、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)がゲームチェンジャーになる可能性があると断言しました。しかし、伝統的な貿易形態が続いており、中小企業のスケールアップが妨げられていると指摘しましました。「アフリカの国々の間で貿易の補完関係を築くなど、スケールアップすることで得られるメリットを明らかにすることが必要です。例えば、ガーナで生産されたチョコレートをケニアの市場で簡単に販売し、カーボベルデの観光を南アフリカの人々に楽しんでもらうことができます」とギルピンは述べました。

地域統合と貿易を支援するために、UNDPのエザコンワ局長は、AfCFTA事務局を地域貿易の拡大と地元企業の統合のためのパイプ役として促進する方策を講じることを推奨しました。 「積極的な貿易の円滑化や、民間企業との連携による支援が可能です。国境を越えた貿易と経済的なつながりは、地元の製品の市場を存続させ、地元の生産者に経済的な機会を与えることで、安定性を高め、経済を維持するのに役立ちます」と語りました。

本イベントを通じて登壇者は、経済改革を加速し、繁栄を共有する10年に向けてアフリカを再活性化するためには、新しい政策課題が必要であること、チュニジアで開催されるTICAD8が、国連の持続可能な開発目標やAUのアジェンダ2063の達成を加速し、パンデミック後の経済回復を促進すべく、国際的なパートナーがアフリカのカウンターパートと緊密に協力するための重要なプラットフォームになると同意しました。

TICAD8は、新型コロナウイルスの後、アフリカがより良い方向に進むための重要なマイルストーンとなると期待されています。