AFRI CONVERSE、アフリカの持続可能でスマートな都市に注目

2021年5月20日

AFRI CONVERSEの2021年3回目が開催され、日本、シンガポール、アフリカの専門家が、アフリカの持続的な都市開発を推進するため、都市化がもたらす変革の力を活用するための知見を共有しました。

議論では、アフリカ全体における現在の進捗と、スマートで持続可能な都市を建設する上での課題や投資機会に焦点が当てられました。

国連開発計画(UNDP)の近藤哲生駐日代表は、2050年までに、世界人口の3分の2(65億人)が都市に暮らすことになると指摘しました。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者の90パーセントが都市に暮らしているということです。持続可能な開発目標(SDGs)に沿って、都市に暮らす人々の生活環境や生活の質を改善する対策が絶対的に必要なのです。」

ボストン コンサルティング グループ(BCG)の老川武志マネージングディレクター&パートナーは、パンデミックにより、アフリカの都市部の欠点の一部が明らかになったと述べました。老川氏は、BCGと国際協力機構(JICA)による最近の共同調査を引用し、ケニアを例に挙げて改善すべき分野を強調しました。

「COVID-19によって都市部の交通手段が抱える課題を明らかになりました。COVID-19に感染するリスクがあるにもかかわらず、多くの人々がマタツ(ミニバス)を利用し続けました。マタツは、一般的に非常に混雑しており、ソーシャル・ディスタンシングの観点から安全ではないのですが、収入がCOVID-19の影響で減少したため、他の交通手段を利用する金銭的余裕がないのです。将来に向けて、より安全で手ごろな価格の交通システムを開発する必要性があるのです。」と老川氏は語りました。

安全な交通をめぐる懸念に加えて、老川氏はまた、インターネット接続のためのコストがケニアやアフリカの大部分における多くの人々にとって依然として課題になっていることを強調しました。JICAとBCGによる調査結果は、アフリカの都市部に暮らす人々がデジタル革命に遅れをとらないためには各都市において、低所得の人々用に広範で手ごろな価格のインターネットを提供する必要があることも明らかにしています。

坪池明日香JICA社会基盤部都市・地域開発グループ第2チーム課長は、COVID-19の現状分析や将来のパンデミックに対して、デジタルを活用した追跡技術を導入することを提案しました。

坪池氏は「データ分析は早期発見・早期対応に不可欠です。地域ごとの、よりエビデンスに基づいた、リアルタイムなデータの収集、分析やマネジメントが必要です。」と述べました。

また、同氏は「スマートシティというソリューションは、『1つのパターンがどんな場合にも通用する』のではなく、各都市が克服したい具体的な課題に基づいた異なるアプローチが必要です。」と語りました。

カラム・ハンドフォースUNDPデジタル化とスマートシティチーム アドバイザーも同意しつつ、スマートシティは未来のテクノロジーのハブであるという人々の認識を改める必要があると述べました。

ハンドフォース氏は「スマートシティはテクノロジーだけではなく、より広い意味でのイノベーションにも関するものであり、自然に基づくソリューション、その土地に関する知識、行動変容、優れた都市計画、政策決定プロセスへの市民の関与や集合知を包含するものです。したがって、スマートシティは5Gだけではなく、自然や人々に関することでもあるのです」と語りました。

ハンドフォース氏はさらに、持続可能な都市やコミュニティづくりは、SDGsの17の各目標の達成にとっても欠かせない点であり、各目標に織り込まれていると指摘しました。

エルバ・フスター・フィゲロラUNDPデジタル化とスマートシティチーム テクニカル・エキスパートは、スマート化が進む都市では、主要なイノベーション・アクター間の関係が発展していると述べました。現地にイノベーション・エコシステムを構築され、雇用機会を創出し、国内の人材を誘致して引き留めることにより、国の「頭脳流出」を軽減する上でも役に立つと説明しました。

また、フィゲロラ氏は、メガシティが発展することによる環境問題についても強調しました。「都市は温室効果ガスの70パーセントを排出し、世界のエネルギーの3分の2を消費し、そして気候変動のリスクに特にさらされています。」

人材活用とイノベーションによって、都市が直面する無数の課題に取り組むことができることを示す一例として、ウガンダ・エコプラスタイル社のフランク・カムギシャCEO(最高経営責任者)の事例が取り上げられました。カムギシャ氏は、母国ウガンダにおいて、プラスチック廃棄物を建築素材や屋根瓦へと作りかえました。

世界では、90パーセントを超えるプラスチックが一切リサイクルされず、1年間のうちに実に800万トンのプラスチックが海洋や飲料水に流れ込んでいると推計されています。

カムギシャ氏は「私は不十分な廃棄物処理や住宅危機がもたらす悲惨な結末を目撃してきました。だからこそ社会的企業であるエコプラスタイルの設立を決意したのです。私たちの使命は、プラスチックを持続可能な建材にリサイクルする一方で、2,000人分の雇用を創出することです。」と説明しました。

UNDPは、包摂的なアフリカ開発アジェンダの実現に向け、アフリカ各国政府、日本政府、民間セクターやその他のパートナーと協力しています。アフリカのスマートで持続可能な都市づくりは、このような協調的取り組みの中核を成すものです。

AFRI CONVERSEは、今後も2か月に一回開催され、アフリカや日本の様々な関係者を結集してアフリカにとって最善のソリューションを見出すことにより、第8回アフリカ開発会議(TICAD8)に向けた機運を高めていきます。