アフリカ発のソリューションで新型コロナウイルス対策を強化

AFRI CONVERSEの2021年4回目を6月25日に開催

2021年7月23日

アフリカの国々が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)の第3波、第4波に見舞われる中、AFRI CONVERSE 2021の最新の対話では、アフリカ諸国による革新的な取り組みと、アフリカにおけるCOVID-19対策を強化するために実施されている国際的な支援について、活発な議論が行われました。

パンデミックの発生から1年半が経過し、アフリカでは250万人を超える人々が感染し、数万人の命が奪われました。国連開発計画(UNDP)の最近の調査によると、COVID-19の影響によって2030年までに貧困に陥る10人のうち8人が人間開発指数の低い国の人々であるとされており、アフリカに甚大な影響を与えると警鐘を鳴らしました。

しかし、パンデミックが人々の生活に深刻な影響を及ぼしているにもかかわらず、アフリカは世界の他の地域に比べて、様々なセクターで極めて高いレジリエンスを示しています。

2021年第4回目となる対話イベント“AFRI CONVERSE”の冒頭で、東京女子医科大学の国際環境・熱帯医学教室の杉下智彦教授は、「このセッションでは、アフリカが有する創造力・生産性・パンデミック抑制能力を検討することの必要性を示し、アフリカの新しい未来を形作るためにどのような支援ができるかを議論します」と述べました。

国際協力機構(JICA)人間開発部・新型コロナウイルス感染症対策協力推進室の瀧澤郁雄室長は「アフリカ他のパートナー国の取り組みを支援するために、JICAは、治療、警戒、予防を柱とする「JICA世界保健医療イニシアティブ」を始動させました。実施中の技術協力プロジェクトを通じて、保健医療分野だけでなく、教育、水・衛生、農業・栄養、その他の社会サービス分野でも協力を行っています」と説明しました。

2020年4月から2021年5月までに、JICAは実施中の技術協力プロジェクトを通じた協力に加えて、アフリカの複数の国で公立病院や感染症検査・研究所の整備のほか、給水、栄養・食料生産に関する無償資金協力を承認しました。また、人間の安全保障に基づき、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)およびCOVID-19対策を推進するための有償資金協力も、いくつかの国で承認されました。ポスト・コロナを見据えて、アフリカの感染症検査・研究所ネットワークのさらなる強化、民間セクターの参画も得たアフリカでの生物医学分野の応用研究・開発の推進、そうした取り組みを支えるグローバルな協力、そして「レジリエンスを備えたUHC」に向けたこれまでのコミットメントを実現するための行動の加速の必要性を瀧澤室長は訴えました。

UNDPアフリカ地域プログラム・コーディネーターのジデ・オケケ氏は、最近実施されたアフリカ地域の影響評価に言及し、アフリカ大陸のCOVID-19感染拡大を防止するために革新的な地域イニシアティブが実施されているが、パンデミックがアフリカにおける人間開発の進展に与える影響は、平和、安全、ガバナンスの視点からだけでなく、社会、経済、政治の側面からも極めて懸念されると警鐘を鳴らしました。

オケケ氏は、地域連携・協力を強化し、能力構築を支援することの重要性を示しました。この点に関して、アフリカの全企業の90%、インフォーマル・セクターにおける雇用の85.8%を占めている中小・零細企業の支援が必要であるとオケケ氏は訴えました。また、UNDPはAfriLabsと提携して、1,500時間を超えるハイテクを活用した事業のシミュレーションや、様々な市場環境下での意思決定スキルの向上など、360の起業家と120の中小・零細企業に短期集中の研修を実施したと説明しました。

Afrochampionsの共同創設者であるエデム・アドゾゲニュ博士は、AfrochampionsがUNDPの協力を得てアフリカを変革することができる「現地発」パートナーシップを推進していること、特に国境を越えた貿易と人の移動を再開させる手段としてCOVID-19のワクチン接種状況を追跡する仕組みについて述べました。「アフリカは現在、史上最大の成人向けワクチン接種プログラムに着手しています。しかし、接種の記録は紙ベースで手作業により行われ、統一されたシステムがなく、計画策定と意思決定を支援することができません」とアドゾゲニュ博士は指摘しました。

こうした課題に取り組むため、UNDP、Afrochampions、PanaBIOSからなるコンソーシアムがGlobal Havenと呼ばれるアフリカ全域をカバーするAIソリューションを立ち上げました。このソリューションは、標準化され統一されたテスト・プラットフォームを提供するもので、ワクチン配送の仕組みをデジタル化することで効率性・公平性・信頼性を高め、これにより国境を越えたワクチンの平等性と接種証明が可能になります。

アフリカ連合開発庁―アフリカ開発のための新パートナーシップ(AUDA-NEPAD)プログラムデリバリー調整局・産業課長代理のベルニス・マクリーン博士によると、アフリカ企業による現地発のソリューションは、アフリカのパンデミックに対するレジリエンスを高める可能性を秘めていますが、企業の多くは現在、様々な課題に直面しています。 マクリーン博士は「我々の目標は、アフリカ連合のアジェンダ2063に即して現地ソリューションを推進し、アフリカのパンデミックに対するレジリエンスを高めることであり、レジリエンス強化に資する優れたソリューションを有する現地企業への支援の重要性を認識しています」と説明しました。

AUDA-NEPAD は、JICAの協力のもと、ボストン・コンサルティング・グループの支援を得て、医療保健分野のアフリカ企業をサポートする「Home Grown Solutions (HGS)アクセラレータープログラム」を立ち上げました。このプログラムは、4分野での支援―個社の状況に応じたアドバイザリー、潜在的な資金提供者の紹介、規制および貿易についてのガイダンス、戦略的パートナーとのマッチング―を対象企業のニーズに応えながら提供する仕組みです。現在、東アフリカを対象としたパイロット運営を実施中で、運営側も実践を通じて学ぶ段階にありますが、この段階で得た知見は、今後の他アフリカ地域への拡大展開にとって有益な情報となるでしょう。

今後もAFRI CONVERSEは隔月で実施します。アフリカおよび日本の様々なステークホルダーの皆さまにご参加いただき、アフリカの最良のソリューションについて議論を深め、2022年開催予定の第8回アフリカ開発会議(TICAD8)に向けた機運が高めていきます。