サヘル地域に繁栄と平和をもたらす投資とパートナーシップ

AFRI CONVERSE特別回を8月27日に開催

2021年9月10日

国連開発計画(UNDP)、国際協力機構(JICA)と政策研究大学院大学(GRIPS)開発フォーラムが共催した対話イベント・シリーズAFRI CONVERSE特別回では、参加した聴衆に対して、「ガバナンス、エネルギー、若者と女性への投資とパートナーシップを拡大することで、サヘル地域における持続的な平和を実現することができる」、というメッセージが発信されました。

3億5,000万人以上が暮らすサヘル地域は、貧困、急激な人口増加、気候変動、食料不足や不安定さで特徴付けられることが多い、多面的な課題に直面しています。

岡井朝子国連事務次長補兼UNDP総裁補兼危機局長は、「情勢不安、ガバナンスの欠如と気候の脆弱性が相互に作用し、高いレベルの不平等、市民の不満、そして究極的に人道・開発危機に拍車がかかっています」と述べました。

しかし、このような課題があるにもかかわらず、サヘル地域には世界最大の再生可能エネルギー潜在力、世界で最も急速に成長しつつある経済、アフリカで最も若い人口(2億人以上が25歳未満)と息をのむような観光地があり、投資と繁栄の大きな潜在的可能性があると岡井は強調しました。

岡井はまた、「この数年間、UNDPはサヘル地域に対する戦略『REGENERATION: UNDP at Work for a Brighter Future in the Sahel』を通じ、予防、安定化、変革と持続可能性を推進する開発アプローチを提案してきました」と語りました。リスクと脆弱性を低減し、紛争を予防し、レジリエンスを構築し、コミュニティと国家を持続可能な開発の軌道に乗せるという目的に応じたアプローチが展開されています。

同地域が直面している複雑な課題を一つの機関で解決することはできないという認識から、UNDPは地域機関や政府を含むあらゆるパートナーと協働し、紛争多発地域の安定化を優先するフラッグシップ・プログラムを考案・実施している、と岡井は述べました。さらに、民間セクターの関与が雇用創出、インクルージョンと経済成長に不可欠なため、同地域のあらゆる長期的、包括的な解決策に民間セクターが関与する必要があると強調しました。

加藤隆一JICA上級審議役は、サヘル地域の政治・安全保障面の背景を取り上げ、貧困と不平等が蔓延していることを踏まえれば、政府と市民の間に信頼関係を構築する開発アプローチが必要だと述べました。

「このアプローチは、市民と政府が協働して強靱な国家を構築し、信頼感を醸成する環境を作り出す上で重要です。私たちの目的は、紛争が発生しない強靱な国づくりを推進することです。これを達成できる方法の一つは、人々にとって機能的かつ役に立つ、包摂的なサービスを政府経由で提供することです」と加藤氏は述べました。

サヘル地域に平和と安定をもたらすJICAのアプローチは、G5サヘル諸国のアジェンダと足並みを揃えた三本の柱に基づいています。これらの柱には、ガバナンスと安全保障、レジリエンスと人間開発、社会経済インフラの開発が含まれます。G5サヘル諸国は、西アフリカの開発政策と安全保障問題における地域協力を調整するための制度的枠組みです。

他方、開発パートナー、地域機関、国家当局が協調した活動にもかかわらず、反政府武装集団や犯罪組織による広範な暴力により引き起こされた強制移住の影響により、サヘル地域の極端な脆弱性が露呈しました。政策研究大学院大学の上江洲佐代子氏は、リプタコ・グルマ地域、ナイジェリア北西部、ニジェール南西部、ガーナ北部を含む国境地域に広がる脅威の状況について詳細に説明しました。

上江洲氏は、サヘル地域への日本の関与がG5サヘル諸国にオブザーバーとして参加した2019年に強化されたと指摘しました。さらに、日本政府が第7回アフリカ開発会議(TICAD7)において、制度構築を支援して紛争とテロの根本原因に対処することを目的とする、アフリカの平和と安定に向けた新たなアプローチ(NAPSA)も立ち上げたことを強調しました。

上江洲氏は、NAPSAが予防と調停の役割を強調していることに触れつつ、地域コミュニティにより近いNGOや市民社会団体を関与させる一層柔軟な協力枠組みの必要性と、様々なアクターを定期的な対話と交流に結集させるプラットフォームを提供する必要性を明らかにしました。

バカリー・コネ国土行政・地方分権化省 地方自治体総局 国際協力パートナー部局二国間課長は、マリにおける成果のいくつかを振り返りつつ、あらゆる利害関係者による持続的なコミットメントが必要であると繰り返し主張しました。

依然課題は残っているものの、基本的な社会サービス分野で2015年から2019年にかけてコミュニティ内で信頼を構築・維持するための6,468件のインフラ・プロジェクトが実施されるなど、マリにおける多数の成功事例は注目に値します。

「政府と市民の間で信頼構築するために地方自治体が実施した活動には、インフラ開発のほか、地方・地域問題の管理への住民参加、地方自治体サービスの管理への女性の関与などがあります」とコネ氏は語りました。

マリのアブドラマン・シセ地方自治体総局長は、持続的な平和と開発に向けた同国のコミットメントを再確認し、日本とJICAが継続的に支援し、関心を有していることに謝意を表しました。

UNDPの岡井は、パートナーシップの重要性に賛同しつつ、UNDPは人間の安全保障の概念に基づくTICADの重点に足並みを揃えながら、長年にわたり日本と協働して平和と安定を推進してきたと述べ、「私たちの介入による実績や構築したネットワークと信頼を活用しつつ、UNDPは、サヘル地域諸国を支援するために日本やJICAとのパートナーシップを強化することを期待しています」と語りました。

対話イベント・シリーズAFRI CONVERSEは引き続き隔月で開催され、2022年にチュニジアで開催予定の第8回アフリカ開発会議(TICAD8)に向けて機運を高めていきます。