アフリカ、サヘル地域の開発における課題は山積しており、息の長い、長年にわたる提携なくしては、このような障害を克服することはできません。最近開かれた国連開発計画(UNDP)と国際協力機構(JICA)との間の年次協議において、この問題が提起されました。
UNDP西・中央アフリカ地域事務所(セネガル、ダカール)マネージャーのンジョヤ・ティクムは、JICAとのこれまでの有意義な提携を評価しつつ、同地域の課題に対応するには、両機関の協力を継続することが重要であると述べました。ティクムは、JICAは人間の安全保障のコンセプトにコミットしており、開発プロジェクトの計画、実行、維持に当たり、現地のコミュニティがより決定的な役割を果たせるようにすることで、より良い未来を保証していると評価しました。
「『UNDP Africa Strategic Offer』では、6つのインパクト分野が特定されました。それらは、平和と安全、構造的経済改革、手に入りやすい価格の持続可能エネルギー、天然資源のガバナンス、気候変動の緩和と適応、若者と女性の雇用とエンパワーメントです。」
同地域では、4,200万人を超える人々が家を失い、さらに数百万人が職を見つけることができていません。サブサハラ・アフリカにおいては、2050年までに、8,500万人が貧困、不平等、気候変動、紛争や脆弱なガバナンスにより、移住を余儀なくされると予測されています。
課題は山積していますが、同様に、開発の機会がとても多くあるからこそ、UNDPの新たな戦略的オファーは、「問題を約束へ」、「課題を機会に」変えることにコミットしているのだとティクムは語ります。
「また私たちは、いくつかの基本的な成功のための要因を特定しており、これらを実施する必要があると考えています。」
その成功要因は、以下のとおりです。
- ガバナンスの改善
- デジタルトランスフォーメーション
- 持続可能で革新的な資金調達
- 戦略的コミュニケーションとパートナーシップ
- 南南協力
- 開発に関する専門的知見
ティクムは、必要な関心が払われさえすれば、デジタルトランスフォーメーションは、特定された6分野の実現において重要な役割を果たすことができると強調しています。「課題となっているのは、その新たなデジタル・マインドセットをいかに活用して、アフリカの開発ソリューションとして特定した6つの大きな優先分野を実現していくのかということなのです」。
UNDPは、サヘル地域に居住している1億5,000万人のうち64%超が25歳未満であると推計しており、こうした何百万人もの若者たちは、適切なツールやリソースを与えられさえすれば、変化を起こすことができると確信しています。
ティクムは、こうした開発への資金調達は、UNDPがパートナーに対して成果を伝達し、開発情報を蓄積することで、いかにアフリカが求める構造改革の達成を支援する解決策を生み出していくかに大いにかかっていると言います。
UNDPが言及した同地域の安定化プログラムに加え、「Sahel Regeneration Offer(2020~2025年)」のフラッグシップ・イニシアティブでは、プログラムや解決策を共同で作り出すべくJICAとのパートナーシップが望まれる主要分野が強調されていると述べました。
「一つはまさにガバナンスに関することです。二つ目は若者に関すること、そして三つ目はエネルギーに関することです。これらの大きな3分野は、いずれも国連によるサヘル地域の統合戦略においても取り上げられており、国連のシステム全体で開発を支援することで合意しています。」
ティクムは、同地域にはサヘル同盟など他のプレイヤーがいることも言及しており、サヘル同盟は、教育、農業、エネルギー、地方分権、ガバナンス、治安などの問題に取り組んでいると述べました。
最後に、ティクムは、こうした分野が特定されたことで、サヘル地域の開発に向けたUNDPとJICAとの短期的なパートナーシップだけでなく、より長期的なパートナーシップが望まれると語りました。
このたび、2020年11月に開催された「第10回UNDP-JICA年次協議」のフォローアップとしてサヘル地域に関するパートナーシップを模索するミーティングが開催され、JICAは、国連によるサヘル地域の統合戦略に支えられたUNDPのSahel Regeneration Offerに関する知見を深めました。同セッションは、サヘル地域におけるUNDPとJICAとの間の将来的なプロジェクトを念頭に、連携の機会を協議すべく開催されました。2021年3月には、日本の2020年度補正予算プロジェクトの新たなサイクルが始まり、サヘル地域内の5カ国でUNDPによるプロジェクトが開始されます。
UNDPとJICAは、2022年にチュニジアで開催予定の第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)に向けて、サヘル地域におけるパートナーシップに向けた、協議を継続していく予定です。