アフリカで包摂的な「グリーンエコノミー」を推進するためのパートナーシップ

2021年第1回AFRI CONVERSE開催報告

2021年1月28日

このたび、国連開発計画(UNDP)と独立行政法人国際協力機構(JICA)による2021年第1回のAFRI CONVERSEが開催され、日本とアフリカから150人を超える参加者が集まりました。

継続的に開催されている対話イベント・シリーズのAFRI CONVERSEは今回、「グリーンエコノミー:アフリカにおけるビジネス機会」というテーマのもと、アフリカ大陸における包摂的なグリーンエネルギーと構造転換に向けた施策や支援の重要性と緊急性を明らかにしました。

アフリカのエネルギー生産方法は現時点で、ほとんど石炭や燃料油、従来型のバイオマス(木炭、薪、乾燥糞燃料)に依存しているため、増大の一途をたどるエネルギー需要を充足すれば、健康や環境に深刻な影響が生じることになります。

ガーナのDrive Electric Initiative(DEI)について発言したプロジェクト調整官のドリス・エデム・アグベビビ氏は、同国が国家エネルギー委員会を通じ、すでにクリーン・エネルギーに向けた施策を促進しており、電力を活用した輸送手段など、新たな技術の試験的採用も始まっていると述べました。

アグベビビ氏はさらに、プロジェクトに欠かせない要素となっているeモビリティが、低炭素排出、環境リスク削減、省エネと資源効率、持続可能な開発というグリーンエコノミーの4大原則に合致していると述べました。ガーナではこれを促進するための政策が導入され、車両の組立が可能な企業も現地で活動している点に触れ、同分野分野の投資機会についても強調しました。

アグベビビ氏は「私たちはガーナでeモビリティを促進するための施策を導入しました。2019年にスタートしたこの取り組みは、着実に成長を遂げています。このイニシアチブをご紹介することで、そのさらなる前進に向けて、どのようなパートナーシップを推進できるか検討したいと考えています」と語っています。

住友商事電力インフラ事業本部Team New Frontier本部長付の鈴木里彩氏は、アフリカにおける「グリーンエコノミー」がもたらすビジネスチャンスと課題に触れ、サハラ以南アフリカで電力を利用できない人々の割合が2018年の時点でも57%存在しているという事と今後再エネが電源の中で重要な割合を占めるとの予測がアフリカにおける「グリーンエネルギー」の市場の規模と機会を示していると語りました。

鈴木氏によると、いくつか課題はあるものの、住友商事はアフリカ大陸における包摂的な「グリーンエネルギー」と構造転換に対する支援の継続に貢献したいと考えているとのことです。

鈴木氏は「私たちは、電力分野におけるEPC(設計、調達、建設)、IPP(発電事業投資)、オフグリッド投資の経験と、グローバルなネットワークを活用しながら、各地域と各国にとって最も適切な解決策を提供することにより、アフリカの社会の成長と発展にプラスの継続的な貢献をしてゆきたいと考えています」と語っています。

UNDPベナン常駐代表のモハメド・アブチール氏は、ベナンの例を挙げながら、「グリーンエコノミー」を迅速化し、アフリカにおけるクリーン・エネルギーへのアクセスをスケールアップする際に直面する課題をいくつか明らかにしました。

アブチール氏によると、ベナンには「グリーンエコノミー」への道のりで取り組むべき幅広い重要課題が残っていますが、その中には2つが含まれています。

  • エネルギー部門で、国民の現代的エネルギーに対するアクセスが限られる中で、バイオマスの利用が圧倒的に多くなっていること
  • 電力を利用できる国民は全体の38.4%にすぎず、都市住民(56%)と農村住民(2.4%)間の格差も大きくなっていること

アブチール氏は「ベナンにおける電力へのアクセスについては、2025年までに都市部と農村部の電化率をそれぞれ95%と65%に高めるという目標を掲げつつ、再生可能エネルギーについても、アクセスを全国的レベルとコミュニティ・レベルでともに24.6%に引き上げるというターゲットを定めています」と語りました。

またアブチール氏は「ベナンが極めて野心的な政府に恵まれ、国内に多くの技術能力を備えていることは、良い知らせです。私たちUNDPは、さまざまなパートナーとともに、ベナンにおけるこの願ってもない環境を活用しようとしています。このような意志と野心、技術的能力は、投資家にとって理想的な条件を提示しています」と付け加えました。

JICA社会基盤部資源・エネルギーグループ次長の上石博人氏は、パネリストの貴重な知見に謝意を表明したうえで、JICA案件の事例に言及しつつ、発電の脱炭素化、エネルギーセクターの脱炭素化、新しい技術とビジネスモデルの支援が重要であると述べました。

上石氏は「私たちはさらに、ミニグリッドやオフグリッドのスケールアップを含め持続可能かつ信頼できるエネルギーアクセス向上のための取り組みを強化してゆきます」と語っています。

SDGs目標7のねらいは、手ごろな価格で信頼できる持続可能な現代的エネルギーへのアクセスを確保することにあります。

また、上石氏はプレゼンテーションにおいて、「私たちは再生可能エネルギー(地熱、太陽光、風力など)に対する支援を増大するとともに、新技術も活用しつつ、さらなる民間投資を促進するための支援を行っていきます」と強調しました。

AFRI CONVERSEは今後も2カ月に1度、アフリカと日本の幅広いステークホルダーを集め、重要な開発課題について考えてもらうことにより、第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)に向けた機運を高めてゆきます。