ナイジェリア・カノ州における現金給付プロジェクト、COVID-19による中小企業への影響を緩和

2021年3月17日

現金給付プロジェクトは、COVID-19の影響で資金繰りに悩む中小企業への救済となるでしょう。Photo: UNDP

国連開発計画(UNDP)は、カノ州政府とナイジェリア連邦政府人道問題省とのパートナーシップにより、無条件の現金給付プロジェクトを立ち上げました。資金の大半は、日本政府とヨーロッパ連合(EU)が提供しています。総額29.5億ナイラ(770万米ドル相当)からなる本プロジェクトは、「Nigeria One UN COVID-19 response」の下で実施され、パンデミックが貧困層や脆弱層に及ぼす社会経済的影響を緩和し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による危機によって深刻な打撃を受けたカノ州の地方行政区(LGA)のコミュニティのレジリエンスを強化することを目的としています。

2020年12月現在、カノ州では感染者数が1,900人を超え、ナイジェリアでも3番目に貧困率が高い同州は、同国においてパンデミックによる影響を受け、感染者が多発している5つの州のうちの一つです。カノ州都市部の貧しいコミュニティ、特にファギー、ダラ、グワレ、タラウニ、ナサラワ地方行政区で構成されるカノ・ミュニシパルにおいて、9,600人の個人が「キャッシュ・フォー・ワーク(労働対価による支援)」プログラムの恩恵を受けられるほか、中小企業(SME)2,500社が、事業継続のための支援として、通常業務や新規事業に充てられる現金給付を受けることになります。

アブバクル・バシル氏は、経験豊富で創造力あふれるカノ州出身の地理空間学者です。情熱を持った23歳の若者は、地理情報システム(GIS)を利用して、妊産婦死亡率や新生児死亡率を評価し、同地域の新生児の健康状態の改善を図ろうとしています。

パンデミックを受けて、バシル氏は、コード化されたO-Dスケールというモデルを開発しました。同モデルは、GISを利用して、カノ州で出産ケアサービスを必要としている女性の出発地と目的地を地図上に示します。このGISでコード化されたデータは、その後適切に分析することで、品質改善サイクルにフィードバックすることができます。

「COVID-19により、妊婦は多くの計り知れない困難に直面しており、長期的な解決策の必要性については、いくら強調しても足りないほどです。O-Dスケールが十分に活用されれば、女性が医療ヘルスケアにアクセスできるようになり、妊産婦の死者数を大幅に減らすことができます。COVID-19が持つ時空間的なダイナミクスを理解することは、その緩和においても不可欠です。パンデミックの規模や影響を明らかにし、意思決定や計画、コミュニティによる行動の助けとなるからです」とバシル氏は語ります。

「UNDP Cash Transfer」は、意思決定に必要な高品質なデータへのアクセスを開放することで、バシル氏のイニシアティブの可能性を十分に発揮する助けになるだけでなく、GISソフトと地図の双方に関する研修を拡大し、妊産婦・新生児保健におけるデータの見える化に取り組む専門家の育成を支援することにもつながります。

アンマリー・ビューティー・サロンの創業者兼経営者であるアンマ・オマル氏は、ヘアスタイリング、マニキュア、ペディキュア、エッセンシャルオイル・サービス等の幅広い女性向け個人用衛生用品を提供する自身の事業を取り仕切っています。またオマル氏は、美容分野でのキャリア追求を希望する他の若い女性たちのメンターであることに誇りを持ちながら、同産業で成功する上で必要なスキルについて指導しています。

「アンマリー・ビューティー・サロンは、私たちの環境に最適なサービスを提供することで、人々のファッション需要に独自の形で応えています。COVID-19に伴う州のロックダウンによる影響がさまざまにある中で、ニーズに応じて顧客の家を訪問するなど、顧客に対する新たなサービスの提供方法を生み出す必要性が、今とても重要になっています」とオマル氏は語ります。

パンデミックとそれに伴うロックダウンにより、アンマリー・ビューティー・サロンの売り上げや事業継続能力は悪影響を受けました。オマル氏は、無条件の現金給付プロジェクトについて、感謝の意を示しています。同プロジェクトによって、事業コストが補助されるとともに、持続可能な生計の手段として美容産業で働く若い女性たちを引き続き指導し、新たに採用することもできるからです。