UNDP、日本企業によるガーナへのSDGsインパクト投資を促進

2021年7月30日

UNDPは2021年7月13日(火)に、ガーナ投資促進センター(GIPC)とUNIDO東京事務所と共催で「ガーナ投資セミナー:ビジネスチャンスとSDG投資機会」と題したオンラインセミナーを開催しました。

本セミナーでは、安永裕幸UNIDO東京事務所長の開会挨拶に続き、姫野勉駐ガーナ日本大使、フランク・オチェレ駐日ガーナ大使が歓迎挨拶を述べ、政治や治安が安定しており基本的なインフラが整っているガーナの投資先としての魅力を紹介しました。

姫野大使は冒頭、魅力的な投資先であるガーナへの日本企業による投資・ビジネスを促す本セミナーは大変重要な会合であると述べられ、UNDPによって発行されたSDG Investor Mapを活用するよう参加者に呼びかけました。また日本企業支援の窓口として現地の大使館、JETRO、JICAにいつでも相談をしてほしいと日本政府による支援体制を強調しました。

第一部のガーナ公的機関による講演では、アンジェラ・ルシギUNDPガーナ事務所常駐代表は、ガーナで発行された「 SDG Investor Map (英語日本語)」を通じて優先的な投資機会を特定し、国内外の投資家に知見・データ・インパクト測定ツールを提供することで、SDGsの達成を加速させていく取り組みを紹介しました。同SDG Investor Mapはガーナ国家中期開発計画に定められた国の開発優先課題と整合し、乗数効果が期待できる分野として農業・インフラ・ヘルスケア・ICT・製造業を特定しており、SDGインパクトだけでなく、ビジネスとして収益を上げる可能性がある細分化された領域と市場の状況に関する実用的な情報を掲載していると説明し、特定のサブセクターと投資可能性領域について触れました。。

GIPCのヨフィ・グラントCEOは、ガーナの投資先の魅力として3つの”O”(Opportunity, Openness, Optimism)を紹介しました。豊富な資源と工業化への転換点にある同国の投資機会(Opportunity)に加え、政治的安定性や投資家保護規制を通じて市場が国内外の投資家へ開かれていること(Openness)、そして、同国の近年の急速な経済成長とコロナ禍での民間セクターへの充実した支援プログラムなどを背景に今後も堅実な経済発展を見込んでいること(Optimism)を述べました。

第二部では、民間企業が関心の高い分野での事業と連携を模索する機会について取り上げました。ガーナで活動を行う公共財団法人味の素ファンデーションとDegas株式会社に加え、IT・農業・製造分野のガーナ企業からも、各社の取り組みが紹介されました。

KOKO Plus Foundation(公益財団法人味の素ファンデーション

カントリーディレクターの高橋裕典氏から、同団体の「栄養改善プロジェクト」が紹介されました。サブサハラ地域では、乳児期の栄養失調が身体と脳の成長を抑制するという問題がありました。そこで同団体では、ガーナの大学・企業や国際機関とも連携しながら、離乳食の栄養バランスを整える栄養補助パウダー「KOKO Plus」を開発。各地で栄養改善効果が検証されると同時に、持続的な課題解決のためにソーシャルビジネスモデルの開発が進められています。高橋氏は、Universal “Nutrition” and Health Coverageの達成に向け、同団体の取り組みを更に強化させていきたいと述べました。


Degas株式会社

CEOの牧浦土雅氏から、同社の農業ビジネスが紹介されました。過去30年で世界全体の貧困人口は急速に減少していますが、サブサハラ地域では増加しています。特にガーナでは人口の70%は農民で低生産性が課題でした。同社は、個人農家のネットワークをつくり、高品質の種・肥料・知識技術を提供し生産性を上げるとともに、収穫した農作物と購買者をつなげるビジネスモデルを開発。牧浦氏は今後の目標として、デジタル技術で集めたデータを活用し、更なるコスト削減や生産性向上を行い、農業を通じて社会インフラを構築していきたいと述べました。


IT Consortium

常務取締役のロミオ・ブジェイ氏から、ガーナにおけるデジタル化の機会が紹介されました。同社は、フィンテックプロバイダーとして、デジタルインフラを提供することにより、ローカル及びグローバルな経済活動をつなぐプラットフォームを提供しています。ロミオ氏は、ガーナのデジタル分野における高い市場機会を紹介した上で、日本企業との協力により、モバイルデバイス・PC・携帯電話等を用いて、金融向けサービスやスタートアップが活用しやすいサービスに加え、ガーナにおいてデジタルスキル養成機関などの設立に取り組んでいきたいと述べました。


Esoko

CEOのダニエル・アサレ・チェイ氏が、同社が取り組むデジタル技術による農業改革を紹介しました。ガーナの人口の約7割を占める農民は、バリューチェーンの未発達、低生産性や農耕地が十分に活用されていないといった課題に直面しています。ダニエル氏は、様々なIT技術によりサプライチェーンを見直すことで、より効率的な産業育成を行い、農業バリューチェーンの価値を高めることができると述べました。特に、日本企業の農業や金融業における情報技術と連携することで、信用供与・付加価値創造・コールドチェーンや運輸などの分野で、ガーナの農業を大きく変えていくことができるとアピールしました。


Glofert Limited

CEOのフォスター・マウリ・ベンソン氏から、同社の肥料製造ビジネスが紹介されました。ガーナを含むアフリカでは、今後急速な都市化や人口増加により食料安全保障への危機が高まるため、アグリビジネス分野への投資が強く求められています。同社の肥料は、個別の農作物や土地などの条件に応じ最適な肥料をテーラーメイドで製造されます。フォスター氏は、ガーナの農業バリューチェーンの大きな市場において、日本企業との連携を通じた投資による農作物生産量向上、及び農業生産性改善への意欲を述べました。


続く第三部のパネルディスカッションでは、GIPC主席投資担当官のエマニュエル・フォーソン氏がモデレーターを務め、ガーナにおける日本企業のビジネス・投資促進に関する成功例や課題について議論が交わされました。

初めに、ガーナ進出時の経験に関して、KOKO Plus Foundationの高橋氏は、現地において同じような関心を有するパートナーを探すことが最大の課題であったことを振り返り、国際機関や援助機関の支援などを通じて、信頼できる現地企業・団体とのパートナーシップを築くことの重要性を述べました。Degas株式会社の牧浦氏は、同社がガーナへの進出を決めた理由として、相対的な政治的安定性や平和度指数の高さを挙げたうえで、2021年6月には金融当局の国際的組織「金融活動作業部会」においてマネーロンダリング対策などへのガーナの取り組みが評価され、監視強化対象の「グレーリスト」から除外されたことに触れ、魅力的な投資先として国外投資家からガーナへの注目がまさに集まっていることを強調しました。

次に、ガーナの農業分野への新型コロナウイルスの影響について議論が交わされました。セクター全体へ大きな影響が出ており、政府や国際機関の支援が行われているものの、今後も拡充する必要性が述べられました。ガーナ民間企業連盟(PEF)のナナ・オセイ・ボンスCEOは、政府との対話を通じ民間企業がビジネス環境をし易い環境・規制を構築する同連盟の取り組みを紹介した上で、コロナ禍では多くの企業が遠隔での活動を余儀なくされており、海外企業は現地企業と友好なパートナーシップを築きながら、ビジネスをスケールアップさせることの重要性を強調しました。ガーナ財務省上席経済担当官&アジアユニット長のルイス・アモ氏は、コロナ禍では民間セクターからの歳入が減ったことや、医療部門への対応が優先されたため、政府のインフラに対する投資は限定的だったとしながらも、同政府がポストコロナに向けて描くGhana COVID-19 Alleviation Revitalization Enterprise Support(CARES)プログラムについて紹介しました。CARESはポストコロナにおける中期的な経済再建を目指し、3年半にかけて1750万ドル(約19億円)相当の資金を国内に流入させるもので、資金の70%を民間部門からの流入に頼る一方、30%は政府の拠出によるとしています。最後にアモ氏は、本プログラムはインフラ開発及び官民連携の促進のみならず、日本企業にとってもよい投資の機会であると述べました。

最後に、SDG Investor Mapについて意見が交わされ、ナナ氏は、ガーナのコンピテンシーとキャパシティ(Competency and Capacity)を特定化し、投資機会を見つけるのに最適なプラットフォームであると述べました。また、ルイス氏は、SDG Investor Mapは、国外の人に現地の有益な情報を簡単に届けられるとし、政府が支援強化を狙う分野とも合致していることが強調されました。

閉会挨拶では、GIPCのアフア・ンテゥリワ・ティチ・ミルズ企業部長より、本セミナーの共催機関へ、特に同国への進出を検討している日本企業への支援を促すための翻訳・通訳の提供に関しての謝意が述べられました。ガーナ政府は民間企業や国際機関と一丸となって、ガーナへの投資促進へ優先的に取り組んでおり、本セミナーはこうした取り組みを後押しするもんであると述べました。

UNDPでは四半世紀にわたって共催しているアフリカ開発会議(TICAD:Tokyo International Conference on African Development) のフォローアップの一環として、日本とアフリカのビジネス・パートナーシップと投資促進を支援すべく2022年開催のTICAD8に向けて今後も同様のビジネス・セミナーを開催していきます。