日本・UNDP・ナミビアの三者間協力を通じた持続可能な開発と経済変革に向けたマルチステークホルダー・パートナーシップの促進

2022年3月14日

ナミビア政府、日本政府、UNDPナミビア事務所の三者協力により、重要な民間セクターのパートナーを含む分野横断的なマルチステークホルダーによるコラボレーションが誕生しました。この三者協力は、日本政府の2020年度補正予算の重点施策に沿ったもので、これによってナミビア初の電子バウチャーによる補助金システムが構築され、2022年2月7日(月)に始動しました。この画期的な電子バウチャー・システムは、ナミビア農水・土地改革省(MAWLR)主導の下で進められ、日本政府の支援によって資金が提供されています。ナミビア初の電子バウチャーシステムは、NEC XONシステムズ・ナミビアを技術パートナー兼システムファシリテーター、ナミビア環境投資基金(EIF)を補助金および資金運用管理者として設立した民間セクターとの協力により、UNDPナミビアによって実施されています。

この電子バウチャー補助金システムは、インターネット環境をほぼ必要としない電子決済方法で、農村地域での展開を成功させるには不可欠です。実施パートナーであるUNDPが補助金を交付し、それが電子バウチャー・システムを介してEIFより分配されます。プロジェクトの受益者にはバウチャー・カードが発行され、受益者は実施パートナーとして特定された調達先で使用します。

UNDPナミビア事務所の常駐代表アルカ・バティア氏は、「農業資材への市場アクセスを可能にし、さまざまな農業資材販売業者が関与することで小規模農家への質の高い農業資材の分配が改善されること」がプロジェクトの焦点であることを強調しました。この分野横断的なマルチステークホルダーを通じて、ナミビアで最も脆弱な人々への新しいソリューションを提供する現地発のイニシアチブを加速するための知見、専門知識、資源を組み合わせ、持続可能な開発目標の達成に向けて官民両組織が一体となって働くようになりました。

原田秀明駐ナミビア大使は挨拶の中で、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによるナミビアの食料システムの停滞に対応するため「日本とナミビアにとって信頼できる長年のパートナーであるUNDPと協力して、農業開発を行うナミビア政府の取り組みを支援するために助力しようと決めました」と強調しました。一方でナミビア政府も同様に、民間部門が持続可能な経済変革の目標達成に不可欠な存在であることを認識しています。さらに、COVID-19や関連する干ばつなどの衝撃から回復するためのレジリエンスを構築し食料安全保障を強化することが重要です。この認識によって、電子バウチャー・システムなどの解決策に向けた政策立案がさらに必要となります。

キャル・シュレットウェイン農水・土地改革相は、ナミビアの画期的な電子バウチャー・システムを正式に立ち上げ、UNDPを通じてこのパイロット事業に日本政府から100万米ドルもの出資が行われたことに謝意を表明しました。またシュレットウェイン大臣はこのプロジェクトの迅速な実行を確実にする上でのUNDPナミビア事務所の対応も称賛しました。

ナミビアは、新型コロナウイルスのパンデミックの発生前にも干ばつや持続的で広範にわたる経済格差、主に農村部に存在する貧困層の問題といった課題に直面していました。しかし農村部から都市部へ人が流出したために、現在ではこれらの課題が都市部や都市周辺部にも及んでいます。このような課題に対処するナミビアの取り組みを支援することは、日本の政府開発援助(ODA)大綱とアフリカ開発会議(TICAD)により促進されている原則である人間の安全保障、貧困削減、持続可能な成長の観点から極めて重要です。

この電子バウチャー・システムは、「よりよい復興」(BBB:ビルド・バック・ベター)都市農業プログラムにより試験実施されています。BBB都市農業プログラムは、ナミビアの都市および都市近郊のコミュニティにおける食糧安全保障の強化と生計の改善に焦点を当てることで、パンデミックによる社会経済的影響に対応するものです。BBB都市農業プログラムは、日本のナミビアに対する開発援助政策に沿って行われています。BBB都市農業プロジェクトは日本政府の出資を受けており、MAWLRとUNDPナミビア事務所が、各州議会との密接な協力の下で共同実施しています。BBBプログラムは現在、4つの地域(エロンゴ州、東カバンゴ州、ホマス州、ハーダップ州)において都市部と都市近郊のインフォーマル事業者や小規模生産者、農家の暮らしの向上を目指しています。

このプログラムでは、都市部や都市近郊のインフォーマル事業者や小規模生産者、農家を対象に、電子バウチャー付与機能を試験的に実施するプロセスを確立しました。補助金は対象となる貧困層や脆弱な立場に置かれた人々に集中的かつ正確に届けられます。これまで緊急支援生活物資の支給は、紙ベースのバウチャーで全国に配布されてきました。この紙ベースのシステムには、意思決定に必要なリアルタイム・データの入手、受益者情報、トレーサビリティなど、いくつかの課題がありました。この電子バウチャーシステムを導入することで、データとエビデンスを作成し、説明責任の向上と補助金管理の効率化のための組織的能力を強化することができます。またデジタル補助金・助成金発行システムは、収集したデータを通じて、意図した受益者に補助金が公平に分配されていることを実証するモニタリング・ツールとしても機能します。これにより、国家レベルでの意思決定の強化にもつながります。

ナミビア初の電子バウチャーシステムは、他の生活補助金やコロナ関連の救済支援に適用できる汎用性の高いツールで、恵まれないコミュニティに直接かつ即座に影響を与えるものです。このデジタルソリューションは、女性、若者、障害者などのナミビアで最も弱い立場にある人々を含む政府補助金の受益者のエンパワーメントを目的としています。この革新的なデジタル補助金システムによって、必要な物資の調達状況が改善され、より持続可能な生計向上のための生産能力の向上が期待されます。設計から実施までの人間中心のアプローチに支えられたこの革新的な共同ソリューションは、ナミビアが新型コロナウイルスのパンデミックの直接的影響から回復し将来の衝撃に対処するための回復力と持続可能性を構築する経済的機会を引き出す可能性を秘めているのです。