グローバルプロジェクト: 日本企業進出先国等における責任ある企業行動の促進

グローバルなサプライチェーンにおける人権デュー・ディリジェンス  公正な復興のための国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」の活用

2022年4月4日
image: UNDP

実施期間

2022年3月~2023年3月

対象国

計17か国

アジア太平洋

モンゴル、ネパール、インドネシア、パキスタン、ラオス、タイ、ベトナム

アラブ諸国

チュニジア

アフリカ

ケニア、モザンビーク、ガーナ

東欧・中央アジア

トルコ、ウクライナ、カザフスタン、キルギス

ラテンアメリカ・カリブ

メキシコ、ペルー

予算

約6.3百万USドル(令和3年度日本政府補正予算)

 

概要

2030アジェンダが掲げる17の持続可能な開発目標(SDGs)の達成、気候変動問題に関するパリ協定が定める目標の達成、人権や環境を損なわないコロナ禍からの「公正な復興」のためには、各国や企業が協調して緊急に行動することが求められています。

責任あるビジネス慣行の促進のため、ビジネスと人権に関する国連指導原則は、企業に対して人権デュー・ディリジェンス(Human Rights Due Diligence: HRDD)を実施し、企業活動が人々と環境にもたらす悪影響を特定・防止・緩和し、人々と環境にもたらす潜在的・実際上のリスクを管理することを求めています。この義務は、ドイツ、フランス、オーストラリア、ノルウェーなどの主要国で法的に義務化されており、EUでも採用される見通しです。

今後、日本企業を含めた各国企業は、HRDDを実施しなければ、EUやその他の主要市場に参入できなくなり、風評リスクや法的リスクにさらされる可能性があります。逆に、HRDDを実施している企業は、そのサプライヤーに同様の取組を促すとともに、事業展開をしている途上国においてビジネスと人権に関する国別行動計画(National Action Plan: NAP)を含む責任あるビジネスに関する法律や政策を採用し、「公平な競争条件(level playing field)」を作るよう促すことになります。

本プロジェクトは、各国政府、日本企業、サプライヤー、パートナーの人権デュー・ディリジェンスの能力及び理解を向上させることにより、日本及び対象国における責任あるビジネス慣行を強化し、公正な復興を促進することを目的とするものです。

UNDPの「ビジネスと人権」プログラム

UNDPは、責任あるビジネスに関する国際スタンダードである「ビジネスと人権に関する国連指導原則」の履行を支援する主要な機関として、世界中の政府や企業と協力して、ビジネスと人権に関する国別行動計画の立案と実施の支援、企業のHRDD実施の支援、人権侵害を受けた被害者が救済を受けるための支援、紛争影響地域における平和構築のための企業との協力などの取組を行っています。

現在、5地域、26カ国のUNDP国事務所において「ビジネスと人権」に関する活動を実施中です。  UNDPは「法の支配・人権・司法・セキュリティ強化グローバルプログラム」の下、国内人権システムの強化、司法アクセスの向上、人々中心のセキュリティの実現など、法の支配・人権分野において、世界各国で多種多様なプロジェクトを展開しており、本プロジェクトも同グローバルプログラムの枠組の中で実施されます。

パートナーシップ

本プロジェクトの実施に当たっては、国連ビジネスと人権作業部会、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国際労働機関(ILO)、国連児童基金(UNICEF)、国連環境計画(UNEP)等の国連機関のほか、日本政府(外務省、経済産業省、法務省等)、国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(JETRO)、経団連等の日本国内のパートナー、国連グローバルコンパクト等の民間セクターのネットワーク、市民社会など幅広いパートナーとの連携を行います。

期待される成果と活動の概要

成果1:

バリューチェーン全体を通じて人権基準の遵守を確保することによる、公正な復興の推進

1.1   日本企業及びそのサプライヤーによる人権リスクに関する調査の実施
1.2   日本企業及びそのサプライヤーに対する人権デュー・ディリジェンスに関する研修の実施
1.3   個別企業への人権影響評価に関するガイダンスの提供
1.4   ポスト・コロナの経済復興において、企業が人権基準を尊重するためのガイドとなるツールキットの作成

成果2:

政府及び国家機関による、ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)又は同様の政策の策定・実施

2.1   公平な競争条件を備えた責任あるビジネス環境を導入するためのNAP又は同様の政策の採用の提唱
2.2   市民社会及び国内人権機関等からの情報等を基に、企業、そのサプライヤー及びパートナーの事業によって引き起こされる最も顕著な人権上の課題を特定するためのベースライン調査実施の技術支援
2.3   UNDPがアジア、東欧など各地域で実施している「ビジネスと人権」に関する地域フォーラムへの参加等を通じた、国境を越えたピア・ラーニングの機会の促進
2.4   NAPが既に策定されている国々における、NAP実施のモニタリング制度の整備