ナミビアのハーダップ州マルタヘーエで若者が育む環境に優しい未来

2022年2月1日

ソウェリアノ・フレデリックスさんは、ハーダップ州のダウェブ農園で園芸の実践訓練を受けている若者の受益者の1人です

ナミビアでは、食糧不足が深刻化する中、脆弱な立場に置かれた若者がますます都市農業に取り組むようになっています。ソウェリアノ・フレデリックスさんは、ハーダップ州のダウェブ農園におけるナミビアの「よりよい復興」(BBB:ビルド・バック・ベター)都市農業プロジェクトの受益者の1人です。ソウェリアノさんは、園芸を学んで持続可能な生計手段を据えるとともに、農業を通じて有益かつ持続可能なキャリアを選択しようと決意しています。

 

ダウェブ農園は「よりよい復興」(bbb)都市農業プロジェクトのハーダップ州におけるプロジェクトサイトです。この都市農業プロジェクトは、ナミビアの農水・土地改革省(mawlr)が設立したマルチステークホルダー・パートナーシップによるもので、日本政府による出資を受けています。ナミビアのbbbプロジェクトは、国連開発計画(undp)ナミビア事務所を通じ、4つの州(エロンゴ州、カバンゴ州、ホマス州、ハーダップ州)の議会との連携の下で実施されています。

ソウェリアノ・フレデリックスさんは、マルタヘーエの厳しい気候条件という試練に向き合う心構えができており、マルチング(植物の株元の地表面を覆うこと)や土壌の保水力に関する訓練をハーダップ州のダウェブ農園で熱心に実践に活かしています

ハーダップ州では、貧困と食料不足が急拡大しており、干ばつの広がりと農村・都市間の大規模な人口移動がそれに追い打ちをかけています。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)もまた、所得の喪失や失業の増加などさらなる試練を突きつけています。マルタヘーエに住む25歳のソウェリアノさんは、この厳しい現実をよく理解しており、少し前まで彼もまたどん底にいました。

パンデミックの前でさえ、ハーダップ州では慢性的な干ばつが一向に収まらなかったため、私たちは干ばつと栄養失調の危機に直面していました。私たちのコミュニティでは失業が大きな問題になっています。私は何年も無職でどうすることもできず、息子を含めて10人の家族を養うのはとても大変でした。そんな時に突然『よりよい復興』(BBB)都市園芸プロジェクトが登場し、私の人生を好転させてくれました。

ソウェリアノ・フレデリックスさんと数人の若い受益者は、ハーダップ州のダウェブ農園でマルチングの利点について実地体験型の訓練を受けています

ナミビアのBBB都市農業プロジェクトの実施においては、園芸作物の生産を奨励しています。このプロジェクトの生産物は、都市部のコミュニティに影響を与える食料不足や栄養失調への対処になります。ハーダップ州のダウェブ農園を含め、ナミビアの4つの州で4つのプロジェクトサイトが設けられています。ただ、各州特有の環境ニーズや課題があるため、それぞれのプロジェクトサイトは概念的に違いがあります。BBBプロジェクトは、特にナミビアがパンデミックで疲弊した経済に対処している今、適時の介入となります。各サイトでは、パンデミックの社会経済的な影響を含め、都市部の家庭の栄養ニーズを改善することを目指しています。

ダウェブ農園が掲げるビジョンは、困難な時期に家庭が生き延びるのを支援することにより、マルタヘーエのコミュニティに影響を与える好事例を作ることです。しかし、ソウェリアノさんやマルタヘーエのコミュニティと同様、ダウェブ農園の旅路も順風満帆ではありませんでした。農園では以前は畜産農業が中心でしたが、干ばつや気候変動の他の影響によって家畜は壊滅的な打撃を受けました。

農園での畜産業はとてもひどい目に遭いました。干ばつで動物が全滅し、農場には何も残らなかったからです。災難でしたが、それから私たちは試練に向き合い、園芸に目を向けたのです。ナミビア政府およびUNDPナミビア事務所からの支援と、日本政府からの出資はちょうどいいタイミングでやってきました。現在ではこのコミュニティの児童養護施設や教会に野菜を寄付できるようになり、とてもうれしく思っています。ダウェブ農園は、地元の複数の若者たちを対象に、労働の対価として食料や現金を支給する機会も提供しています。これは私にとってとても重要なことです。彼らが経験している試練が私には分かりますから。

ソウェリアノ・フレデリックスさんをはじめとする都市農業プロジェクトの受益者は、園芸農業や農業協同組合の設立に関する理論的・実践的なトレーニングを引き続き受けています。さらに、BBBの受益者は同じような都市農業計画の視察に出かけています。彼らはマルチングや堆肥化の実演に立ち会いました。土壌の保水力や、ハーダップ州の乾燥した気候に適した作物の種類ごとに必要とされる水量についても実地体験で学びました。BBBプロジェクトは、過酷な環境をさらに和らげるべく温室にも資金を提供しており、ソウェリアノさんや他の若い受益者は熱心に訓練を実践に活かしています。

(左から)ソウェリアノ・フレデリックスさん、サミュエル・ジョエルさん、リッキー・サイモンさん。若い受益者たちはハーダップ州のダウェブ農園で駆け出しの農家としての経験から学んだことを自信に満ちた様子で共有しています

現在、私のコミュニティ出身の若者数人がダウェブ農園で栽培するもので生計を立てています。ここは社会経済的な問題を数え切れないほど抱える貧しいコミュニティで、雇用や食料へのアクセスに苦労する場合が多いことを考えると、私たちの日常生活は常に戦いです。しかし、BBB都市農業プロジェクトとダウェブ農園のおかげで、私たちはこのパンデミックを何とか生き延びています。ダウェブ農園は私たちのコミュニティの複数の人々の命をつなぎ止めていると確信しています。ダウェブ農園での私たちの使命は、マルタヘーエのコミュニティからできるだけ多くの若者を雇用することです。また引き続き、年金生活者や、ここマルタヘーエの児童養護施設で暮らす脆弱な立場に置かれた子供たちのことも深く考慮し続けます。