国連開発計画、新たな報告書で視覚障がい者の「情報と知識への平等なアクセス」を提唱

2015/12/03

Photo:Creative Commons image courtesy of the Advocacy Project on Flickr


国連開発計画(UNDP)と世界盲人連合アジア太平洋地域協議会(WBUAP)はこのたび、新たな報告書を発表し、視覚障がい者及び印刷物の利用に障がいのある人々の知る権利(right to know)の実現を、開発優先課題としてさらに重視するよう訴えました。

出版物を点字や音声、電子書籍などのアクセス可能なフォーマットで公平、適時かつ安価に読めないことにより、世界中で数多くの障がい者が人間開発に不可欠な機会を活用できなくなっています。その結果、印刷物利用に障がい(print disabilities)のある人々は、教育や雇用、病気の予防など、政治、経済、社会のほとんどの側面への参加から排除されています。

12月3日の「国際障がい者デー」に合わせて発表された報告書『私たちの知る自由:印刷物利用に障がいのある人々に関するマラケシュ条約のアジア太平洋における批准に向けた法的検証』はアジア太平洋地域の6か国に対し、批准プロセスを促進し、マラケシュ条約を最大限に活かすための法改正に関する技術的指針を明示しています。

2013年6月に締結された「視覚障がい者及び印刷物利用に障がいのある人の出版物へのアクセス促進のためのマラケシュ条約」は、アクセス可能な形態での出版物の複製と、その国境を越えた普及を妨げている法律上の障壁排除を狙いとしています。この条約は、印刷物利用に障がいのある人々が「同じ本を、同じタイミング、同じ価格で」読めるようにする一方で、著者の権利と利益の保護も確保するという目標の追求を可能にする法的環境の整備に道を開くものです。

しかし、この条約はまだ発効していません。マラケシュ条約の発効には20か国の批准が必要ですが、現時点の批准国は11か国に止まっています。条約の恩恵が滞りなく印刷物利用に障がいのある人々に届くようにするためには、批准促進に向けた取り組みがさらに必要です。

UNDPのアジア太平洋地域事務所のナディア・ラシードHIV・保健・開発チームリーダーは「この報告書は、新たに採択された『持続可能な開発目標(SDGs)』の主要素である『誰も置き去りにしない』という原則を実行するための明確な合理的根拠と、実用的な法的指針を提供しています。マラケシュ条約の批准と履行には、社会から最も隔絶された人々の基本的人権を守り、貧困を削減し、排除に終止符を打つという意味があります。これはUNDPの中核を成す開発理念と一致します」と語っています。

マラケシュ条約の主要条項と、期待される恩恵を解説する今回の報告書には、政府や視覚障がい者コミュニティ、開発パートナーに条約の重要性を訴えると共に、マラケッシュ条約に関する能力向上と政策対話を促進する目的があります。報告書はさらに、マラケシュ条約の批准と履行を、SDGsの達成と「国連障がい者の権利に関する条約(略称:障がい者権利条約)」履行に向けた世界的な取り組みの一環として位置づけることにも役立ちます。

田畑美智子WBUAP会長は「視覚障がい者やその他の印刷物利用に障がいのある人はこれまで、子どもも大人もあまりにも長い間、出版物へのアクセスを否定されてきました。マラケシュ条約の発効が待たれる中で、今回のWBUAP・UNDPのパートナーシップと報告書は、各国を導く光となり、知る自由という基本的人権の実現に貢献すると信じます」と語っています。

世界盲人連合によると、全世界の視覚障がい者2億8500万人のうち、大半に当たる90%は開発途上国で暮らしていますが、これらの国々でアクセス可能なフォーマットに転換されている出版物は、1%に満たないのが現状です。この状況は「本の欠乏」と呼ばれています。

進む高齢化や、糖尿病をはじめとする生活習慣病の蔓延により、世界の印刷物利用に障がいのある人々の数が増加の一途をたどる中で、さらに多くの出版物をアクセス可能なフォーマットで読めるようにする重要性は、ますます高まるものと見られています。

報告書はこちらから、PDFとアクセス可能なフォーマット(点字データ、デジタル・音声情報システム、音声)でダウンロードできます。

 

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