トレーニングと少額資金援助によるタイ深南部における女性の雇用機会向上

2016/02/10

パッターニー県でサイカオ農村主婦コミュニティ企業を創設した、ノンパン・プロムスックさん。Photo: UNDPタイ事務所/Angelique Reid

タイ深南部のパッターニー県、サイカオ村の56歳の主婦、ノンパン・プロムスックさんは「私たちのグループは、近い将来に生計を高めてくれる少額資金援助への応募に自信を持っています。」と語りました。

ノンファンさんは、小規模なコミュニティが協力し、地元のフルーツ、ガルシニアを調達・保存・販売するサイカオ農村主婦コミュニティ企業の創設者です。このコミュニティ企業があるサイカオ村は、生活改善プロジェクトに選ばれた8つのコミュニティのうちの1つで、UNDPが行う「タイ深南部エンパワメントおよび参画プロジェクト(Southern Thailand Empowerment and Participation: STEP)」を通して少額資金援助を受けています 。日本政府とUNDPのパートナーシップ基金が支援するこの少額資金援助は、現地の人々の生活改善を通して、タイ深南部での紛争状態の中でも、現地コミュニティにおける平和を強固なものにすることを目的としています。

紛争の影響を受ける地域
タイには約330万人ものイスラム教徒が居住しており、国内総人口の5%を占めています。イスラム教徒の大多数が居住するタイ深南部では、住民のおよそ80%がマレー人でありイスラム教徒です。

2004年1月から2014年4月までの間に、タイ深南部のパッターニー県、ヤラー県、ナラーティワート県及びソンクラー県で、紛争に伴って1万4128件もの暴力事件が起こり、6097人が死亡し1万908人が負傷しました。過去10年以上、市民たちはこの紛争に苦しんできました。女性と子どもは特に被害を受けやすく、2004年以降3000人以上もの女性が紛争により配偶者を失っています。その結果として、女性は必要な術を持たないまま、一家の唯一の稼ぎ手として働かざるを得ないのです。

現在も続く紛争は、これらの地域における開発を著しく阻害しています。2014年のUNDP人間開発指数の雇用指数では、パッターニー県はタイ国内76県中76番目と最下位に位置しています。

社会的結合の強化
2009年に開始されたSTEPプロジェクトは、タイ深南部の紛争被害地域における社会的結合の強化と人間の安全保障へのリスク軽減のため、様々な政府部門、学術研究機関、市民社会及び地域の関係者と提携し、協働しています。

少額資金援助プログラムは、紛争地域の真っただ中にあるコミュニティが直面する経済的ストレスを緩和し、持続可能な生活発展を促進することによって、多文化的コミュニティ間の社会的結合を強めることを目的としています。

ガルシニアの保存
ノンパンさんは長い間ずっとサイカオ村に住んでいます。この地域は自然資源に恵まれ、ドリアン、ロンコン、ガルシニアなど、よく知られたさまざまなフルーツの産地として知られています。ガルシニアは酸味があるため、1キロあたり4~5バーツ(15円程)と低価格で売られていました。2005年からサイカオ農村主婦コミュニティ企業を経営しているノンパンさんは、「10年前、私は主にサイカオ村とソンクラー県で育つガルシニアは、たくさんの製品に使用できるはずだと考えました。ガルシニアは酸味があり、毎年6月から8月の季節にしか採れないため、一般的にはカレーの材料として用いられています。私はこの地域の住人は主に米生産かドリアン、ランブータン、マンゴスチンなどの果物生産に従事しており、ガルシニアを作っている人は誰もいないということに気が付きました。私は村の女性達を集め、ガルシニアを保存することで価値を高め、年間を通して販売できる商品を作るコミュニティ企業の設立について話し合いました。私が声をかけた25人の女性のほとんどが主婦で、彼女たちはこのビジネスアイデアを歓迎してくれました。そうして私たちはサイカオ農村主婦コミュニティ企業を設立したのです」と話しました。

トレーニングと開発
ノンパンさんは10年ものコミュニティ企業経営の経験を持つ一方で、これまで経営に関する公式なトレーニングを受けたことは一度もありませんでした。近所の人にUNDPのSTEPプロジェクトフェーズ2によって少額資金援助が受けられると聞いたノンパンさんは、プロジェクトスタッフに詳しい情報を問い合わせました。その結果、彼女はサイカオ農村主婦コミュニティ企業のメンバー2名と共に3日間のトレーニングに参加しました。その他の7つのコミュニティプロジェクトからも3名のメンバーも招かれており、参加者は計30名にものぼりました。初日は2015年6月に行われたプロジェクト計画の準備についてのトレーニングで、参加者はプロジェクト計画案の書き方の指導を受けました。2回目は2日間にわたり、プロジェクトの実施、財務管理、製品開発、製品標準化、包装及びマーケティングについてのトレーニングを受けました。

トレーニングが有益だったかと問われたノンパンさんは、「とても刺激的でした。なぜなら私たちは製品の標準化と新しい製品の開発方法を学ぶことができたからです。私たちは製品の認証や国際基準を満たす品質について、どの政府部門に問い合わせるべきかについても知ることもできました。このトレーニングを受けた後、メンバーと私はスパイシーで酸味のあるガルシニアの新製品の開発を既に始めています」と答えました。

ナルディー・ジャンダッシンUNDP STEPプロジェクトフェーズ2、シニアプロジェクトマネージャーは、「トレーニングでは資金援助の受領者に対し、プロジェクトの管理、マーケティング、包装及び保健認証への応募に関する必要なスキルを提供します。STEPプロジェクトフェーズ2はそれぞれのコミュニティプロジェクトへのニーズとスキルに基づいて特別な職業訓練を引き続き行い、この少額資金援助プログラムを通し全てのコミュニティプロジェクトが有効に実施されるよう、地元機関と協働していきます」と語っています。

さらに、ナルディーはSTEPプロジェクトフェーズ2では今後、プロジェクト管理、予算計画、製品開発、市場へのアクセスについてアドバイスし、この活動に従事する関係者が地元住民のニーズに沿って社会的連携を強めていくことが重要だ、と付け加えました。

少額資金援助
トレーニング後の2015年6月、STEPプロジェクトフェーズ2はノンファンさんのサイカオ農村主婦コミュニティ企業を含むパッターニー県で7件、ナラーティワート県で1件のコミュニティプロジェクトを対象に少額資金援助を行いました。

8月に資金援助を受けたノンパンさんは「資金援助により、私たちは機能的で配管設備も整ったキッチンを新設して職場環境を改善し、新製品の開発を進めようと思っています。資金援助は本当に助かりますし、トレーニングも同じくらい重要であるということが分かりました」と話しました。「このビジネスには現在35歳から75歳までの女性55人が取り組んでいます。トレーニングと資金援助を受けてから私たちのモチベーションは上がり、保存したガルシニアを原料にして、さまざまな製品を開発し、販売していきたいと考えています」と彼女は付け加えました。

このコミュニティ企業の最年長者、75歳のアーブ・ぺトーンさんは「私は自分の仕事が大好きです。ここでは友達と話をしながらお金を稼ぐこともできるのですから」と話しました。アーブさんは4年間このコミュニティ企業で働いており、ガルシニアの皮むきとカット作業に従事しています。アーブさんは「忙しいときには、毎日仕事に来ます。午前5時から午後5時まで働くのです。以前、私は田んぼで働いており、そこでの仕事はとても辛く、収入も不安定でした。でも今では安定した収入を得られるようになりました。毎月およそ4500バーツ(125米ドル)も稼ぐことができるのです。その収入で私たち夫婦は毎週家庭に必要な物資を買うことができるようになり、私はとても幸せです」と話しました。


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