2020年版人間開発報告書は人々の願望と地球のバランスに焦点

新型コロナウイルス(COVID-19)による警鐘 〜気候変動と生物多様性の損失に加えて、自然への負荷が開発と公正な社会づくりの脅威に〜

2020年6月12日

Photo: UNDP

ニューヨーク、2020年6月11日人間開発に対して未曾有の影響を与えている新型コロナウイルスはまた、人類が自然や地球にかけ続けてきた負荷が人々の幸福に及ぼす結果に対しても、警鐘を鳴らしています。

コロナ禍は、私たちの社会が相互に関連しており、全ての場所で危機が解消しない限り、あらゆる場所で脆弱性に直面し続けるということを明らかにしました。こうした脆弱性により社会の分断が深まり、それに加えて、気候変動と生物多様性の損失という問題に関してもこれまで以上に危機感が高まることは必至です。

2020年版人間開発報告書では、これらの課題を掘り下げ、いかに地球とのバランスをとりながら、自然との関係を再構築し、現在と将来の人々の生活を改善していくかに焦点を当てていきます。

「人と開発を、なぜか地球から切り離されたものと考えることは間違っています。私たちの存在は自然の一部なのです。この事実を無視すれば、壊滅的なリスクに将来の世代が脅かされるだけではありません。すでに現在、多くの人々の生活を苦しめているのです」と、国連開発計画(UNDP) 人間開発報告書室長のペドロ・コンセイソンは述べます。

気候変動、生物多様性の損失、土地利用の変化から見えてくるのは、人類20万年の歴史と地球が誕生して以来46億年の中で、いま、人間は初めて(地球そのものに大きな影響を与える)地質学的な力を持つようになったということです。私たちは新たな地質学的時代、「人新世 (Anthropocene)」に生きていると主張する人もいます。人類がもたらすこのような影響は、私たちの共通の未来を危険にさらすだけでなく、すでに多くの人々の機会や生活を奪い、これまでも存在してきた格差をさらに深める恐れがあるのです。

「私たちはかつてないほど、人類が直面しているリスクや脅威をしっかりと理解し、またそれに基づいて行動を起こす力があります。今こそ断固たる行動が必要であり、持続可能な開発目標(SDGs)で謳われている『我々の世界を変革する』ことを阻む社会的、経済的、技術的な課題に立ち向かうことができれば、それは可能となるでしょう」と、コンセイソンは強調します。

開発に関する様々な報告書が発行されていますが、そのほとんどが自然もしくは人々のどちらかのみに焦点を当てています。これは、人新世における誤った二分法です。自然科学と社会科学、さらには人文科学の連携強化が進みつつある中、国民の議論や意思決定に情報を提供できる新たな見識が生まれつつあります。

2020年の新報告書では、これらの知見をもとに、人と地球が一蓮托生の運命を持つと捉える、人を中心とした人間開発の視点に基づき、最新の地球システム科学と世界の格差の分析結果をまとめます。

SDGsは、すでに世界が目指すべき未来を指し示しています。新人間報告書では、そこに到達するために必要なステップと、その方法について議論します。具体的には、社会的規範や価値観を変える力、科学技術の役割、自然をベースとした解決策の利用拡大、資本や資源の配分のための市場インセンティブを変えることなどについて考察します。

さらには、意思決定を導く新しい指標も公開を予定しており、生態系の進化や人々との相互作用についての識見を提供します。


2020年版人間開発報告書の最新情報はこちら:http://hdr.undp.org/en/towards-hdr-2020

メディア連絡先: Anna Ortubia | anna.ortubia@undp.org; +1 6466424071