国連機関、新型コロナウイルス感染症対応で 救命医療技術製品の現地生産拡大に向けた 共同取り組みとして「技術アクセス・パートナーシップ」を発足

2020年5月19日

ニューヨーク – 国連テクノロジー・バンクは、国連開発計画(UNDP)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、世界保健機関(WHO)と合同で、開発途上国の新型コロナウイルス対策を強化し、救命医療技術へのアクセスを拡大させるための協調的アプローチの一環として「技術アクセス・パートナーシップ(TAP)」を立ち上げました。

新型コロナウイルスの世界的大流行を受け、個人用防護具や医療機器、診断法に対する需要が指数関数的に増大する中で、資源が限られた国々は、新型コロナウイルスに対する効果的対策を実施するための必要なツールを買うことも、生産することもできないことが多くなっています。技術的な専門知識や研修、規制枠組みがないことで、これらの地域では、人工呼吸器のような複雑性の高い製品をはじめ、必須機材の現地生産も限られています。

TAPのねらいは、不可欠な専門知識を持つメーカーを、開発途上国の新興メーカーとつなげ、これらの用品等の生産拡大に必要な情報、技術的専門知識および資源を共有させることによって、深刻な必須医療技術・機器の不足に取り組むことにあります。このパートナーシップでは、品質安全基準を満たす手ごろな価格の技術と機材を開発できるよう、各国への支援も行っていきます。

アミーナ・J・モハメッド国連副事務総長は次のように語っています。「国際社会では今、人命を救い、持続可能な未来を確保するため、これまで以上に結束が必要とされています。若者にとっての機会という意味では、不平等が技術面、デジタル面の格差を広げており、この格差によって取り残される人々が出る心配があります。パートナーシップを通じて必要な技術へのアクセスを広げることは、医療、人道、社会経済面における国連の新型コロナウイルス対策に欠かせない要素です。」

TAPを主導する「後発開発途上国のための国連テクノロジー・バンク」は2016年、各国政府による最新技術の開発と適応を援助する目的で設立されました。今回のイニシアティブには、すべての開発途上国が参加できますが、UNDP、UNCTAD、WHOもコア・パートナーとして支援に回ります。

国連テクノロジー・バンクのジョシュア・セティパ事務局長は、「命を救える技術が利用できなければ、多くの開発途上国は壊滅的な規模に及びかねない新型コロナウイルスの影響に太刀打ちできません。開発途上国がこうした技術製品等を現地生産できるようにすることで、私たちはこうした国々の復興への道のりを支援できるのです」と語りました。

TAPの主な役割は下記のとおりです。

  • 製品情報 – 製造・設計仕様、技術的知識および能力育成に必要な情報のデジタル倉庫。
  • 技術指導 – 市場力学に関する情報や規制上のハードルなど、生産を軌道に乗せようとする際に製造業者が直面しうる問題のトラブルシューティングを援助する技術支援のライフライン。
  • パートナーシップ – ノウハウやニーズ、能力に応じて企業のマッチングを行うプラットフォーム。

今回の取り組みは、持続可能な開発のための2030アジェンダと、新型コロナウイルス危機における責任の共有と連帯を求める国連の呼びかけを指針としています。

アヒム・シュタイナーUNDP総裁は次のように語っています。「不可欠の医療技術へのさらに公平なアクセスを進めるうえでTAPが果たす役割は、新型コロナウイルスによる当面の破壊的な影響への対応を迫られる開発途上国に対する支援の基盤となります。しかも、不可欠な知識や技術的ツール、指導に対するアクセスを広げるためのTAPによる取り組みは、将来のショックに対する各国や社会のレジリエンスを高めると同時に、その社会と経済の復興に向けた原動力としても役立つことになるでしょう。」

「新型コロナウイルスは、どこかで病気が流行すれば、あらゆる場所で脅威となることを明らかにしました。私たちは一致団結して、あらゆる国を支援し、救命技術への公平なアクセスを確保しなければなりません。こうした国での医薬品や医療技術へのアクセス拡大は、新規感染の広がりを抑え、死者を余計に増やさないようにするために欠かせません」こう語るのは、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長です。

TAPはその他関連のイニシアティブとも協力し、互いの新型コロナウイルス対策が連動し補完し合うよう確認していきます。このパートナーシップは、新型コロナウイルスの世界的大流行による社会経済的影響への対処を図る国連開発システム全体のアプローチで中心的な位置を占めていますが、こうした取り組みには、全世界で検査と治療の能力を拡大すること、最弱者層に社会的保護を提供すること、将来的なパンデミックに対する各国のレジリエンスを高めることが含まれています。

ムクヒサ・キトゥイUNCTAD事務局長は、「技術アクセス・パートナーシップは、開発途上国の危機からの復興を支援する取り組みで、重要な要素となる可能性があります。今回のイニシアティブは、現地メーカーの技術と生産能力を拡大することにより、イノベーションを推進し、インクルーシブな経済成長に寄与することができます」と語りました。

TAPは当初の試行プロジェクトとして、全世界でいくつかの開発途上国のメーカーとの連携を開始する予定です。

カンボジアのチョム・プラシット上級大臣・工業科学技術イノベーション相は次のように語りました。「国民の医療ニーズを満たすためには、技術と機材のギャップ解消への取り組みを緊急に開始する必要があります。我が国は、特殊用途のスペアパーツや特定の技術的ノウハウ、多様な技術の経験、研究開発資金がいずれも不足し、他の開発途上国と同じような課題に直面しています。TAPによって、これらツールへのアクセスが改善することで、人命は守られ、国内で新型コロナウイルス対策が推進され、将来的な危機への備えにも役立つことでしょう。」