ミャンマー:コロナ禍と政治的危機により人口の半数が来年までに貧困に陥る恐れとUNDPが報告

2021年5月3日

難民キャンプの学校で学ぶミャンマー出身の少女(バングラデシュ東部、2009年)

ヤンゴン発 – ミャンマーが過去10年強の間にようやく達成した貧困削減の成果が、後退のリスクにさらされています。国連開発計画(UNDP)は「新型コロナウイルス、クーデターと貧困:ミャンマーにおける負の累積ショックと人間開発に与える影響」と題する新報告書をまとめ、コロナ禍と進行中の政治的危機による複合的影響により、ミャンマーの貧困層は倍増する恐れがあると発表しました。この状況が続けば新たに最大1200万人が貧困に陥り、来年初めまでにはミャンマー人口の半数近くにあたる2500万人もが貧困線以下の暮らしを余儀なくされると警告しています。同国でここまで貧困が広がりを見せるのは2005年以来のことです。

報告によれば、コロナの影響により、収入が平均で半分近くまで減少した世帯は、昨年末までに83%に上ったとのことです。コロナ禍に伴う社会・経済的打撃により、ミャンマーの貧困層は11ポイント上昇したと推測されています。

さらに、今年2月からの同国における治安や人権、開発状況の悪化に伴い、貧困率は来年初めまでにさらに12ポイント、急上昇すると見られています。

アヒム・シュタイナーUNDP総裁は、「2005年から2017年までの12年間で、ミャンマーは貧困に苦しむ人々をほぼ半減させました。しかし、過去1年間に起きた様々な困難により、ようやく成し遂げた開発が後退の危機にさらされています。民主主義的な制度が機能しない中、ミャンマーは、近年には見られなかったレベルの貧困に逆戻りしてしまう悲劇を避けられない状況に直面しています。」と述べました。

報告書によれば、最も大きな打撃を受けるのは女性と子どもで、ミャンマーの子どもの半数以上が1年以内に貧困に陥ると予測されています。

都市部の貧困は3倍に増えると推定され、治安状況の悪化に伴うサプライチェーンの切断により、人、サービス、そして農産物を含む商品の移動が妨げられ続けています。都市部の貧しい人々の雇用と収入の大半を生み出す小規模ビジネスは大きな打撃を受けています。

ミャンマーの通貨、チャットの急落により、輸入品や燃料の値段も上昇しています。同時に、同国の銀行システムは麻痺状態が続き、現金が不足し、社会福祉給付も限られています。さらに、困窮した家庭が頼りとする送金も届かない状況です。

カニ・ウィグナラジャ国連事務次長補・UNDPアジア太平洋局長は、「現在起きている複合的な危機は、前例のないほど深刻で複雑です。ミャンマーは貧困を半減させ、民主主義への移行により、人間開発の進展が確固たるものとなりつつある兆しを見せていました。しかし今は2005年へ後戻りしているように感じられます。コロナ禍と政治的危機による複合的打撃はシステムへの衝撃を与えました。いち早く対処、解決されない限り、長きにわたり、ミャンマーの開発の道筋を途絶させてしまう可能性があります。」と述べました。

ミャンマーの状況の悪化が続く中、国連事務総長は一般市民の殺害を強く非難し、国際社会が一致団結して確固たる対応を取るよう呼びかけました。UNDPも軌を一にするものです。

報告書全文はこちらから