若者を中心とした世論が圧力となり、世界の主要経済国において意欲的な気候変動対策への気運が高まる見通し

国連開発計画(UNDP)の大規模世論調査によると、G20諸国では気候変動を危機と捉える人が大多数でその割合はさらに増加中。18歳以下の若者が気候変動対策を最も強く求めていることが判明

2021年10月25日

Photo: UNDP Bhutan

2021年10月25日 ニューヨーク発 – 25日、国連(UNDP)とオックスフォード大学は、G20諸国の気候変動に関する大規模な世論調査の結果を発表しました。今後、気候変動に関心の高いティーンエイジャーが投票権を得るようになるにつれ、気候変動対策への支持が広がっていくと見られています。

G20みんなの気候投票 (Peoples' Climate Vote)」と呼ばれるこの世論調査は、18歳未満の若者30万2,000人を含む、G20諸国の住民68万9,000人を対象にしたもので、G20サミットが30日にイタリア・ローマで、COP26が31日にイギリス・グラスゴーで開幕するのに先立ち、結果が発表されました。

調査結果の一部は今年1月に発表されましたが、今回は18歳未満の若者たちがどのような気候政策を支持するかについての結果が、新たに発表されました。

調査対象となったG20諸国では、「気候変動をグローバルな緊急事態と認識する」と回答した18歳未満の若者の割合が、アルゼンチンやサウジアラビアの63%から、イタリアやイギリスの86%まで幅はあるものの、全ての国で過半数を超えました。またほとんどの国で、このように認識した年齢層は、18歳未満の若者が年長者よりも多く、その差はオーストラリアで11%、アメリカで10%、インドで9%など、大きく開く国も多く見られました。

世界経済の約80%、世界の排出量の約75%を占めるG20諸国が意欲的に行動しなければ、世界の気温上昇を産業革命以前に比べて摂氏1.5度未満に抑える努力を行うという、2015年のパリ協定で定められた目標を達成することは不可能となってしまいます。

アヒム・シュタイナーUNDP総裁は「今回発表した『G20 みんなの気候投票』によると、G20 諸国では平均して若者の7割が、私たちが今、グローバルな気候緊急事態に直面していると認識しています。この気候緊急事態を今後引き継ぐことになる若者たちは、世界のリーダーたちに向けて、今すぐ気候変動対策をとるようにと、明確なメッセージを送っています。世界は今、グラスゴーで開催されるCOP26 に各国が集結し、文字通り、未来を変えるような意欲的で歴史的な決断を下すことを期待しています。」と語っています。

調査が行われたG20諸国で18歳未満の若者に最も支持された気候政策は、森林と土地の保全(59%が支持)、太陽光・風力・再生可能エネルギー源による発電の拡大、および気候に優しい農業技術の採用(ともに57%が支持)でした。これらの政策に対する若者の支持率は、年長者と比べて最初の2つの政策では3%、気候に優しい農業技術の採用においては4%、それぞれ高い結果が出ました。

若者(18歳未満)と年長者の差が最も大きかったのは、質が良く手頃な保険へのアクセス向上(5%差)でした。これは、異常気象の被害を受けた人々がより早く生活を再建することを助ける政策です。クリーンな電気自動車や自転車の利用に関する政策も5%差で、18歳未満の支持を得ました。

気候変動政策における世代間の差は、各国の特徴によってさらに大きな差が見られる国もあり、若者が投票権を持つ年齢を迎えると、近い将来、気候変動政策を求める声がより強いものに変化する可能性があることを示しています。

オックスフォード大学社会学部のスティーブン・フィッシャー教授は「今回の調査結果からは、G20の若年層が各国政府による意欲的で幅広い政策対応を望んでいることがわかります。彼らが投票年齢を迎えるにつれ、政治指導者たちは、このように気候変動を強く意識する新たな有権者の高い期待感を無視できなくなります」と述べています。

レポート全文(英語)はこちら


問い合わせ先:
Browning Environmental Communications:
Mark Grundy (United States) | mark@browningenvironmental.com
Adisa Amanor-Wilks (worldwide) | adisa@browningenvironmental.com

UNDP:
Mehmet Mehmet Erdogan | mehmet.erdogan@undp.org


参考

本世論調査の実施期間は2020年9月から2021年6月までです。

G20の調査結果は、中国とEUを除くすべてのG20加盟国を対象としており、インドネシアと南アフリカについては、調査上の制約から18歳未満のみの結果を提供しています。

ある政策を支持していると推定される層の割合に関しては、その政策を支持していない層が必ずしもその政策に反対していることを示すものではありません。特定の政策を支持していないのは無関心が理由のこともあるためです。

国別の結果は、その国の国籍を持つ人ではなく、その国の居住者の意見を示しています。例えば、フランスのデータは、「フランス人」の意見ではなく、「フランス在住者」の意見を示す結果となります。