UNDP、日本の支援を活用し、インド政府と覚書を締結〜スパイス産業へのブロックチェーン技術の導入に向けて〜

2021年5月19日

Photo by Akhil Chandran on Unsplash

ニューデリー ― UNDPは日本政府(内閣府)の支援を受け、4月5日、インド国商工省香辛料局 (Spices Board, Ministry of Commerce and Industry)との間で、スパイス産業へのブロックチェーン技術の導入に関する覚書を締結しました。

インドは世界一のスパイス生産国及び消費国であり、2019-20年の年間輸出額は30億ドルに上ります。他方で品質の担保やトレーサビリティが課題となっており、世界市場での競争力強化に向け改善が必要な分野となっています。また、中間業者が大きな利益を上げている反面、生産農家への利益配分が低いことも問題です。この原因の一つに農家がアクセスできる情報量が少ないという現状があり、バリューチェーン内の情報格差も解決すべき課題となっています。

こうした問題に対応するため、UNDPインド事務所のアクセラレーター・ラボ(社会・環境課題の解決策を模索し実験的な取り組みを行う部署)は、日本政府(内閣府)の支援で実施されているJapan SDGs Innovation Challenge for UNDP Accelerator Labsに参加し、(NECのインド現地法人である)NEC Corporation India社および一般社団法人Japan Innovation Network (JIN)と連携して、ブロックチェーン技術の導入検証を進めています。日本の支援ではアーンドラ・プラデシュ州グントゥール地域の約5万5千人の農家から唐辛子生産データを収集、香辛料局のプラットフォームに搭載し、農家、加工業者、小売業者に利用してもらうことで課題解決コンセプト/ビジネスモデルの検証を行います(フェーズ1)。その後、フェーズ2では香辛料局が主体となり、唐辛子以外のスパイスを含め、日本の支援で検証したコンセプト/ビジネスモデルを他の地域に拡大していくことが期待されています。これにより、スパイスの生産、処理、加工、流通、販売といったバリューチェーンの各段階での情報を追跡し、スパイス製品の透明性を高めることで消費者の信頼を獲得し、世界市場での競争力強化を目指します。また、情報格差改善、農家の収益向上も期待されます。

署名式では、香辛料局のサティヤン・ドゥライ局長から、UNDPとのパートナーシップ締結に対する歓迎の意に加え、ブロックチェーン技術の導入とインド産スパイスの競争力強化、農家の収入向上に向けた期待が表明されました。UNDPインド事務所の野田章子常駐代表からは、インドの香辛料局、日本の内閣府、NEC、およびJINと連携し、インド産スパイスのバリューチェーン強化への第一歩に貢献できることへの喜びが表明されました。

今後は、ブロックチェーンアプリの実装、農家のアプリへの登録、香辛料局が運営するウェブサイト:eSpice Bazaarへのアプリの統合を進めて行きます。本事業はインドにおける初の試みで、UNDPと香辛料局との覚書締結のニュースは50以上の現地メディアによって報じられました。